44歳デビューの遅咲き・窪美澄氏、直木賞受賞に「冗談なんじゃ」 受賞者待ちは「苦痛」

第167回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)が20日発表され、直木賞を受賞した窪美澄(くぼ・みすみ)氏(56)が都内のホテルで記者会見に出席した。受賞作は短編集「夜に星を放つ」(文藝春秋)。

記者会見に出席した窪美澄氏【写真:ENCOUNT編集部】
記者会見に出席した窪美澄氏【写真:ENCOUNT編集部】

新型コロナウイルス禍や婚活アプリなどを取り上げた

 第167回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)が20日発表され、直木賞を受賞した窪美澄(くぼ・みすみ)氏(56)が都内のホテルで記者会見に出席した。受賞作は短編集「夜に星を放つ」(文藝春秋)。

 窪氏は東京都稲城市生まれ。フリーの編集ライターを経て、2009年「ミクマリ」で、第8回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞しデビュー。11年、受賞作を収録した「ふがいない僕は空を見た」で第24回山本周五郎賞を受賞した。本作は新型コロナウイルス禍や婚活アプリなどを取り上げた。

 受賞について、「小説家として、隅の方で生きてきた人間なのに、いまこうして記者会見に立っているのは冗談なんじゃないかなという気がしています。私がとってごめんなさいという気持ちもあります。選んでいただき、ありがたかったです」と感想を口にした。

 受賞者の決定を待つ間は「苦痛」だったという。受賞の電話を受けた時の気持ちについては「私はせっかちなので、この時間が早くとにかく終わってほしいという感じでした。この苦痛の時間がやっと終わったと思いました」と話した。

 コロナ禍が執筆に影響したといい、「コロナでこの3年の間、非常に重いものを私も皆さんも抱えて生きていると思います。小説では、せめて明るくなるものを書きたいと思って書きました。この本が息抜きになればいいなと思ってつづりました」との思いを語った。「コロナ禍で年下の友人たちがすごく婚活アプリにハマっていて、私自身はやったことがないのですが、コロナだからこそみんな寂しくて心のよりどころを求めているのかなと思って 、ちょっと書いておきたいと思って書いたテーマでもあります」との制作秘話も明かした。

 家族小説を多く書くことについての質問には、「家族はすごく大きなテーマで、私が生まれ育った家庭は離婚家庭でしたし、私もシングルマザーになりました。世間的に、いま国が言うような正しい家族ではなかったんです。正しい家族は両親がそろって子どもが2人いる、異性愛同士の家庭ですと言われると、すごく違和感があるんです。それに、違うぞと言う思いがあって、たぶんいろんな家庭の形を書いているのだと思います」と答えた。

 44歳でデビューした遅咲きの作家。今後について、「44歳の時に最初の本が出たので、残された時間は他の作家さんより短いんです。残された時間で、いかに良質な作品を残すかが課題です。直木賞の名前に恥ずかしくないような作品を次々と書いていきたいと思います」と意気込みを語った。最後に、「いま書店さんが次々とお店をたたんでいて、みんな本を読まなくなっていると思います。私自身もそうですが、どうしても違うエンタメを見たくなる時もあることはすごくよく分かります。でも、小説にしか解決できない、心の穴というか、閉じることができない心の穴というものが誰しもあるのではないかと思っています。そういう小説を書いていきたいですし、日本の小説はいろいろなテーマでいろいろなことが描かれているので、何か心に迷いがある時は、ちょっと近所の本屋さんに行って、何か1冊、文庫本でもなんでもいいと思いますので、読んでみてはいかがでしょうか、ということを皆さんにお伝えしたいです。お願いしたいです」とメッセージを寄せた。

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