村雨辰剛、築60年の日本家屋で和暮らしを満喫 リフォームと床の間に“和の精神”
スウェーデンから日本に帰化した庭師でタレントの村雨辰剛(むらさめ・たつまさ)が、注目度を高めている。NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の米軍将校ロバート役で一躍話題に。このほど、北欧の日本好き少年が独学で日本語を学び、持ち前の行動力で道を切り開いてきた半生をまとめたフォトエッセー「村雨辰剛と申します。」(新潮社)を刊行した。和を愛する33歳に、築約60年の日本家屋での“和暮らし”、役者としても芽吹きそうな今後について聞いた。
「カムカム」米軍将校ロバート役で一躍話題に 役者としての飛躍
スウェーデンから日本に帰化した庭師でタレントの村雨辰剛(むらさめ・たつまさ)が、注目度を高めている。NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の米軍将校ロバート役で一躍話題に。このほど、北欧の日本好き少年が独学で日本語を学び、持ち前の行動力で道を切り開いてきた半生をまとめたフォトエッセー「村雨辰剛と申します。」(新潮社)を刊行した。和を愛する33歳に、築約60年の日本家屋での“和暮らし”、役者としても芽吹きそうな今後について聞いた。(取材・文=吉原知也)
2020年から築約60年の民家に暮らしている。平屋建てで、広い庭のある賃貸の借家だ。
「古民家の定義は分からないのですが、築60年ぐらいなので、僕はあえて『古い民家』と呼んでいます」
自宅を、DIYのように住みやすくアレンジを加えている。このほど、自身のYouTubeチャンネルで、ゆったりくつろげる和風デッキが完成したことを報告している。
「新しく作って改造すると言うよりは、古いものを尊重しつつ、それを大事に使い続けて修理してあげるというのが一番の考え方です。それは家もそうですし、家具もそうです。何かが壊れた時に、自分に合うように形を作り変えるイメージです。例えば、自宅の壊れた『濡れ縁』を、和風ベースに現代要素を取り入れて和風デッキにリフォームしました」
床の間が一番のお気に入り。トーク番組「徹子の部屋」(テレビ朝日系)出演時に自宅を紹介し、話題にもなった。いろりとしても使える木製テーブルなどを置いているという。
「床の間はすごく気に入っていて、季節のものを飾るようにしています。日本文化の魅力に、季節感を大切にすることがあると思います。それを表す1つの空間が、床の間なのかなと思います。掛け軸を例に挙げると、今だったら夏のモチーフのものを掛けます。お客さんを招く時に、おもてなしの空間があるというのはすごくすてきな考え方だと思います。
いろりのテーブルは、恐らく昭和初期・中期に人気があったようです。丸太のような大きな木の幹をそのまま使っているので、和の雰囲気、自然由来の良さを感じられます」
生け花を嗜んでいる。それも、本業の庭師に関係しているそうだ。
「常に生け花を飾っているのではないですが、何かこれを生けると面白いなと思った時やお客さんが来る時に、花を生けます。生け花はまだまだ経験が浅いのですが、庭造りと生け花はバランス感覚や自然な配置の仕方、余白の使い方においてすごく関係性が深いです。それに、僕の親方(加藤造園の加藤剛さん)から、ずっと『生け花をやった方がいい』と言われていました。すごく勉強になりますし、両者につながりを感じているので、生かし合っていくような感覚で取り組んでいます。でも、普段の床の間は、飼い猫の芽吹(めぶき)がいたずらしちゃうので、いたずらされても困るようなものは置いていないんですよ(笑)」
「日本のいいところは、柔軟性だといつも思います」
家は古い造りだけに、冬は寒く、夏は蒸すそうだ。これも、四季を感じる和暮らしの“豊かさ”と捉えている。
「そこは根本的な造りですからね(笑)。湿気対策のため風通しを考慮した昔ながらの知恵で、隙間が多いです。どうしても家作りの技術がかなり進んでいる分、最近の家屋と比べると住みにくいところは確かにあります。でも、それも味じゃないですけど、プラスに捉えて考えています。ただ、一番きついのは、梅雨の時期です。湿気がすごくて。今年は今のところ雨が少ないので大丈夫そうです」
「カムカムエヴリバディ」で知名度が一気にアップした。役者として出演作が増えているが、庭師との両立はどのように取り組んでいるのか。
「僕の人生の中で一番反響がありました。ありがたいです。両立については、僕の施主様はスケジュール面でご理解のある方が多く、メディアのお仕事をいただく場合はちょっと日程を調整させていただいていまして、何とか両立させています。皆様には感謝しています」
役者としての今後は。
「いただけるチャンスがあれば、ぜひやらせていただきたいと思っています。もちろん作品ごとの設定はありますが、いただく役柄に自分の持ち味を吹き込んで、自分にしか出せない味を追求していきたいです。もっともっと演技を磨いて頑張っていきます」
23歳の時に造園業の世界に足を踏み入れ、師匠との出会いもあり、「日本ならではの美意識を伝え、日本庭園を残したい」という強い思いを持って道を究めてきた。日本に住んで約15年。日本の良さをどう感じているのか。最後に聞いてみた。
「日本のいいところは、柔軟性だといつも思います。新しく入ってくるものに対して、すぐに対応したり適応したりするところです。それを改善して新しい形に変え、自分たちのものにしていくんです。その根底には、おもてなしの考えがあると思っています。相手のことを考えて、相手のために何ができるのかを突き詰めていく。歴史的にも、日本に根付いてる精神なのではないかと思っています。そこが僕のすごく好きなところです」
□村雨辰剛(むらさめ・たつまさ)、1988年7月25日、スウェーデン生まれ。幼い頃から日本に興味を持ち、日本語を勉強し始める。高校卒業後、19歳で来日。語学講師として働き、23歳の時に造園業に飛び込み、修行を経て庭師として独立。26歳の時に日本国籍取得と和名改名を果たす。テレビ、CM、ファッション雑誌など、多岐にわたって活躍。YouTubeチャンネル「村雨辰剛の和暮らし」を運営している。