「THE MATCH」の名付け親はフジテレビだった 調整役務めたRIZIN笹原広報が明かす舞台裏
那須川天心VS武尊による「世紀の一戦」が行われた「THE MATCH 2022」(6月19日、東京ドーム)が終わって、早くもひと月が経とうとしている。今回、K-1、RISE&シュートボクシングの選手がリング上で火花を散らしたが、その調整役になったのがRIZINだった。そこで今回はRIZINの笹原圭一広報を直撃。最前列席が300万円になった経緯を含め、その舞台裏を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
まずは直近の「RIZIN.36」の話から
那須川天心VS武尊による「世紀の一戦」が行われた「THE MATCH 2022」(6月19日、東京ドーム)が終わって、早くもひと月が経とうとしている。今回、K-1、RISE&シュートボクシングの選手がリング上で火花を散らしたが、その調整役になったのがRIZINだった。そこで今回はRIZINの笹原圭一広報を直撃。最前列席が300万円になった経緯を含め、その舞台裏を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
――笹原さん、先日「RIZIN.36」(7月2日、沖縄アリーナ)が終わったばかりなんですけど、諸々、話を聞かせてもらおうかと。
「最近はとくに(大会が)終わって余韻に浸るような部分が減って来ている気がします」
――笹原さんの場合、年々、責任が大きくなって来てますもんね。
「もう25年くらいこの仕事をやってきているじゃないですか。この仕事を始めた時は、自分の25年後のことなんて考えずにやってきましたけど、時間が経ってみると、さすがに四半世紀もやれば、もうちょっと偉くなって、ふんぞり返っていられると思っていたんですけどね(笑)」
――多少はアゴで人を使えると思っていたのにと(笑)。
「やっていることは全然変わってないですね。それはそれでありがたいことではあるんですけど」
――ちなみに沖縄大会では、試合の2日前に朝倉海選手の欠場が決まって、チケットの払い戻しが発表されたりもしました。
「それが一番大変でしたね。海選手が普通に試合ができていれば、また違ったんでしょうけど、ホントにギリギリまで、なんとかやれる方法を探していたんですが、結果的には直前の欠場アナウンスになってしまった」
――そしたら「ふざけるな、RIZIN!」みたいな空気になったと。
「それはそうなりますよね。たぶん、RIZINの歴史上、メインが飛んだのは初めてじゃないかと思います」
――PRIDEやDREAMではあったかもしれないですけど、あまり聞かない話でした。しかもあのタイミングでなくなるっていうのは、前代未聞かもしれない。
「これがセミファイナルに、メインに負けず劣らずのような骨太カードが入っていれば、『それをメインにします』でやれたかもしれませんけど、今回は朝倉海が圧倒的なメインだった。そのカードが消滅したことでお客さんから厳しいお叱りの声をいただきました」
――まあ、あのタイミングだと、さすがに文句の一つも言いたくなりますよね(苦笑)。
「なのでPPVは無料放送、チケットは払い戻しの対応をしようと。加えて来場者には特製タオルをプレゼントすることにしたんです」
――榊原信行CEOは「売上だけで言えば、数千万規模円でダウンする」と話していました。
「まあ、でもそれはしょうがないですよね。興行なので勝ち・負けはつきものですから。ただ、負けるにしても意味のある負けにしなくちゃいけない。だから無料放送・払い戻し・プレゼントまで徹底的にやったんです」
――大会を開催するのはある意味バクチですもんね。
「最終的にはお客さんに満足いくものを見させられたかなんですが、あらためてメインに据えた試合(鈴木博昭VS平本蓮)がスイングしない試合になり、イベント全体がぼんやりとしたものになってしまった。もちろん鈴木選手も、平本選手も全力で戦ったことは間違いないですが、お客さんにまでそれが届けられなかった。まぁでもそれも含めて主催者である我々の力不足だったということです」
――試合後の総評でも、榊原CEOが「人生甘くない。苦い夜というか試練の夜になりました」とコメントしていました。
「来年は絶対に沖縄でリベンジを果たしてやろうと、誓いました(キッパリ)。絶対に面白い大会にしますよ!」
――息着く間もなく、今月末には「RIZIN.37」(7月31日、さいたまスーパーアリーナ)が開催されます。
「そうなんですよ」
「THE MATCH」とつけたのはフジテレビ『これ、THE MATCHとかいいんじゃないですか?』
――あのー、もちろん今月末の「RIZIN.37」に向けた話も聞かせてほしいんですけど、その前に、やっぱり「THE MATCH 2022」(6月19日、東京ドーム)の話をお聞きしたいなと。
「ええ」
――「PRIDE.1」(1997年10月11日、東京ドーム)以来、25年ぶりにまたまたビッグエッグが、今度は「THE MATCH 2022」という弟を生み出したと勝手に思っているんですけど、まずあのタイトルに関して、実は昨年のクリスマスイブの会見があった時に、榊原CEOが……。
「まさに『THE MATCH』と呼ぶにふさわしい』みたいなことを言っていたと思うんですけど、あれはあえてあの言葉を使い、タイトルを予告していたんです」
――やっぱりそうでしたか。
「仮タイトルでそれがあったんですよ。しかもそのタイトルは、それこそフジテレビの方が『これ、THE MATCHとかいいんじゃないですか?』って話があって、とりあえず『THE MATCH(仮)』で進んでいたんですけど、それがそのまま正式タイトルになった感じです」
――結果、RIZIN、K-1、RISE、それからシュートボクシングや新日本キックなども含め、この調整が大変だったとは思うんですけど、笹原さんの立場としては何が大変だったんでしょうか?
「当然、K-1さんとRISEさんはこれまでまったく交わっていなかったですからね」
――2018年には訴訟沙汰にもなってますしね(苦笑)。
「たぶん、これはウチの榊原もそうだと思うんですけど、そこはまったく気にしてないんですよ。RIZINは」
――終わったことだと。
「それよりも新しいものが生み出せるのであれば、面白いことをしましょうっていう感覚だったんですけど、K-1さんとRISEさんはまた違う感覚でいたと思うので、そこは僕らが間に入って、調整役として動いた感じです。ただ、僕らはキックボクシングに関しては正直門外漢なので、誰と誰をやらせるのはダメみたいなこともよく分かっていなかった。だから、こだわりがないからこそ、できた部分はあったのかもしれないですね」
――最初の会見は去年のクリスマスイブで、2回目が今年の4月7日だったんですけど、本当はもっと早くやりたかったんですよね。
「そうです。コロナの件が落ち着いて、東京ドームにお客さんがフルでいれられることが決まってから会見をしたので、そこまでかかっちゃいましたね」
――2回目の会見では、最前列席が300万円という料金が発表されましたけど、実際、どの辺りからその金額の話が出始めたんですかね。
「いや、でも最初からそんな話は出ていましたね。500万円っていう数字も出ていたし」
――500万円!
「っていうのはそれこそ席数に限りがあるじゃないですか。そうなると最前列席が50万円だった場合、全席を買い取りたいっていう声も結構あったんですよ」
――そうだったんですか!
「そうなんです。もちろん、いろんな方が買いたいわけですから、それはできないから、そうなると値段を上げて、さすがに全部買い占めることは難しいだろうっていう金額にしようってことで、300万円っていう値がついたんですね」
――それで300万円に。
「ええ。でも、それも結果、瞬殺(即完)でしたからね」
――300万円なんて大丈夫かな、とは思わなかったですか?
「いや、全然売れると思いましたね(キッパリ)」
――自信があったと。
「ただ、それ以外の席も含めて、ここまで会場がギッシリ、お客さんに来ていただけるとは思ってませんでした」
――蓋を開けて驚いたと。
「世の中、お金持ちが多いなと(笑)」
――それだけの価値を感じられたってことですよね。
「それだけ炊いて来ましたからね。ほぼ7年間、炊いて来た分だけの熱があったんですよね」