オダウエダ「インディーズは総合格闘技」 肌で感じた地下芸人の台頭、お笑い界の変革

“地下芸人”――。昨今のお笑い界を戦国時代に変えた存在だ。「M-1グランプリ 2021」でいえば、真空ジェシカ、モグライダー、ランジャタイ。ピン芸人でいえば、ハリウッドザコシショウといった面々を思い浮かべる人も多いだろう。「女芸人No.1決定戦 THE W 2021」で優勝したお笑いコンビ「オダウエダ」もそのひと組。吉本興業所属ながら“吉本感”がないと言われる理由と地下芸人としてエンタメ界を渡り歩いている今について当事者である小田結希と植田紫帆に話を聞いた。

オダウエダの2人が「THE W」優勝後の変化について語る【写真:ENCOUNT編集部】
オダウエダの2人が「THE W」優勝後の変化について語る【写真:ENCOUNT編集部】

「別の職種に転職した」ほどの変化

“地下芸人”――。昨今のお笑い界を戦国時代に変えた存在だ。「M-1グランプリ 2021」でいえば、真空ジェシカ、モグライダー、ランジャタイ。ピン芸人でいえば、ハリウッドザコシショウといった面々を思い浮かべる人も多いだろう。「女芸人No.1決定戦 THE W 2021」で優勝したお笑いコンビ「オダウエダ」もそのひと組。吉本興業所属ながら“吉本感”がないと言われる理由と地下芸人としてエンタメ界を渡り歩いている今について当事者である小田結希と植田紫帆に話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 芸歴8年目での「THE W 2021」優勝。賞レース制覇後の変化を興奮気味に口にした。

「前と後では、全然違います。今までアルバイトで生活していたんですけれど、それも卒業できて今はお笑いだけで何とか食べていける状態です。今までやってきたこととは違うお笑いの仕事も増えました。テレビの仕事っていうのが大きい。本当に別の職種に転職したんちゃうかって。毎日やること考えることが変わりましたね」(植田)

 性格も良い方へ変わったようだ。「優勝前、去年とか結構暗かったんですよ。だんだん明るくなっていってるなというのは自分で感じています。なんでなんやろ」(小田)と首をかしげる。

 観衆の前では気丈に振る舞っていたが、もちろん焦りはあった。

「うちらって去年で8年目。芸歴10年目が見えてきているなかで、『これどうやって今後生きていくかな』って。バイトで今何とかやっていっている状況で『これちょっとつらいな』って思っている時期でしたね」(植田)と表情は曇った。

「THE W 2021」への挑戦が暗かった日常を変えた。「『THE W』ぐらいから、いろんな先輩とか後輩とかと話すようになったんですよ。劇場の先輩に『アドバイスください』って言いに行ったりしました」と振り返った。

ブレーク前には「月20本ライブ中、2本しか自分の事務所ライブ出てない」こともあったとか【写真:ENCOUNT編集部】
ブレーク前には「月20本ライブ中、2本しか自分の事務所ライブ出てない」こともあったとか【写真:ENCOUNT編集部】

当事者が肌で感じた“地下芸人”の台頭

「同じライブに出ていた人たちが売れ出している」(植田)。地下芸人として取り上げられることの多い「オダウエダ」は今日のお笑い界の変革を肌で感じていた。

 地下芸人の台頭を当事者はこう指摘する。

「吉本では、大阪芸人が強いと元々言われていたんですけれど、東京芸人さんが最近勢いあるんです。地下芸人という言葉をもう少し分かりやすくすると『インディーズライブ』。外の事務所とか関係なく、総合格闘技としていろんなお笑いをやっている人たちが集結して戦える場所。そこで切磋琢磨(せっさたくま)している人が結局強いのかなと思います」(植田)

 ゲーム好きらしい例えも使って説明する。「吉本所属だと吉本流のお笑い使いが多くなってくる。格闘技で言うと空手。しっかり形があるお笑いが多くなるんですけれど、やっぱり他のライブとかだと吹き矢で戦ってくる。そういう人たちと戦っていると、いろんな場で、シチュエーションで、急に槍で刺されても対応できるみたいな感じですかね」(植田)と熱弁だ。

 インディーズライブという文字にとらわれてはいけない。芸の引き出しを増やすことにもつながっている。「他のライブや他事務所さんのライブに出ることで、見たことないネタの領域が広がります。『こんなネタもあんねや』とか『こういうボケをやってもいいんや』という勉強になりますね。いろんなライブシーンに出て全部の場所でウケたら良い。ういう作業をやっているから強いのかな」(小田)と分析した。

 ブームの渦中にいるからこそ次の波も感じている。

「地下ライブっていうのがブームになってきて、いろんな事務所でライブができることがとても増えました。逆に事務所ライブしか出ない芸人っていうのが強くなってきています。吉本でいうと神保町の若手がすごく強くなってきていて、時代は変わっていくじゃないですけれどちょっとそういう変化も見えてきているので、我々も『もっと鍛えなあかんな』と思っています」

 なぜ地下芸人のイメージが「オダウエダ」にはあるのか。吉本感がない理由にも言及する。「自分の事務所ライブに呼ばれなくて、他事務所のインディーズライブにも出まくってたからやと思います」(小田)とうなずいた。

 ブレーク前の苦労も明かした。「東京に移籍してすぐくらいだと、なかなか事務所ライブとかも出れなかったりして、なんとか今までお世話になった方の外のライブで助けてもらうみたいな感じでしたね」(植田)。

 全国14か所で自前の劇場を運営している吉本興業。所属芸人全員が出られるわけではないようだ。「吉本の劇場と他の事務所ライブの比率は1対9とかもありました。月20本ライブ中、2本しか自分の事務所ライブ出てないみたいな」(植田)と苦笑い。

 結果として「オダウエダ」の長所であり強みになった。「どこの現場に行っても知っている先輩がいる。昔からのなじみの人がいるので、いっぱいいろんなところのライブに出た分、仲間が増えて良かった」(植田)と笑顔に変わった。

 吉本所属芸人でありながら、インディーズライブで鍛えてきた「オダウエダ」。まさに“総合格闘技”で戦ってきたからこそ、芸に深みがある。寝て良し、立って良しのコメディアンに今後も注目していきたい。

□オダウエダ、2014年にコンビを結成。1995年6月26日、愛媛県生まれの小田結希と91年7月1日、大阪府生まれの植田紫帆からなる。2021年女性芸人ナンバーワン決定戦「THE W 2021」で優勝。

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