辛さを「単位」として数値化 映画「ザ・ファブル」監督考案の“辛メーター”とは
暑さで食欲が減退しがちなこの季節、辛いものを食べて心地よい汗をかきたいという人も多いのではないだろうか。たまには激辛グルメに挑戦したいと思っても、あまりに辛すぎて食べられない、反対にまったく辛くなくて拍子抜けといった失敗は避けたいもの。そんな世の辛いもの好きの永遠のテーマを、「辛さの単位」を発明することで解決しようというユニークな試みを行う企業がある。映画監督・江口カンが発起人となった「辛メーター株式会社」とはいかなる会社なのか。「辛メーター」開発の経緯を江口監督に聞いた。
「辛すぎる!」「辛くない…」のミスマッチなくしたい 映画監督の江口カンが考案
暑さで食欲が減退しがちなこの季節、辛いものを食べて心地よい汗をかきたいという人も多いのではないだろうか。たまには激辛グルメに挑戦したいと思っても、あまりに辛すぎて食べられない、反対にまったく辛くなくて拍子抜けといった失敗は避けたいもの。そんな世の辛いもの好きの永遠のテーマを、「辛さの単位」を発明することで解決しようというユニークな試みを行う企業がある。映画監督・江口カンが発起人となった「辛メーター株式会社」とはいかなる会社なのか。「辛メーター」開発の経緯を江口監督に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
「1辛・2辛・3辛……」や「小辛・中辛・大辛・激辛」、ときには「500辛」や「地獄」「鬼辛」「閻魔」など、世の中に辛さを表す言葉は数あれど、その単位はお店によってバラバラだ。また、辛さの感じ方は人それぞれ。激辛と思った料理が全然辛くない、あるいはピリ辛と思って頼んだのに辛くてとても食べられない。「辛メーター」は、そんなミスマッチをなくそうと2020年1月にリリースされたスマートフォン向けアプリ&ウェブサイトだ。
現在約5万人登録されているユーザーが、各地の飲食店や市販の激辛商品を食べ比べ。0.01~4.99まで499段階評価で辛さをジャッジし、そのビッグデータを独自のアルゴリズムで分析、人間の感覚に基づいた客観的な辛さを「KM(カラメーター)」というオリジナルの単位で算出するという仕組みになっている。アプリでは自分が心地よいと感じる「マイ辛値」が算出され、それと比較することで、ちょうどいい辛さのメニューを探し出すことができるという。グルメレビューサイトのように、エリアで検索をかけたりレビューを書き込んだりすることも可能だ。
辛メーターの“言い出しっぺ”は、「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」などのヒット作で知られる映画監督の江口カン。辛いものを食べて失敗した苦い経験が、純粋な開発の動機だという。
「僕自身、辛いものが好きでよく食べるんですけど、これまで多くの“激辛事故”を味わってきました。世の中にごまんとある辛さの単位を統一することができたら、少しは世界が平和になるんじゃないかと思ったのが開発のきっかけです。面白いと思ってくれた周りのWEB開発メンバー達と会社を立ち上げ、統計学や脳科学の教授、大手総合商社や食品メーカーにも協力してもらって開発を進めました。仕組み自体は偏差値のようなもの。精度はさらに上げたいところですが、すでに十分実用的なレベルに達しています」
カプサイシン量を表す「スコヴィル値」もあるが…あくまで人間の感覚に準拠
辛さを測る単位には、すでにカプサイシン量を表す「スコヴィル値」というものがある。だが、料理の辛さはカプサイシンだけに限らず複合的な要素があり、熱いものは辛さを感じやすく、酸味のあるものは感じづらいなど、他の刺激との兼ね合いでも感じ方は変わってくるという。
「辛メーターはあくまでも人間の感覚を頼りにしているので、ユーザーが単位の感覚を身につけるほど、実感にフィットするようになっています。『口に入れたときの衝撃』の単位でもあるので、カレーやラーメンといった異なる料理はもちろん、花椒のシビレやわさびの辛さなどもあえて同じ土俵で数値化しています。いずれは脳の知覚に関する研究や、病気やケガの痛みを数値化できるような仕組みなど、いろんなものに応用できる可能性を秘めていると思います。何より、世の中に新たな単位を作り出すって、すごくロマンがあることじゃないですか」
昨年4月からはハウス食品とコラボした「しあわせの激辛」シリーズが登場。ヘビーユーザーで構成された「辛メーター評議会」とメーカーによる協議の末、パッケージには「公式KM値」が記載されており、自分がちょうどいいと思う辛さ「マイ辛値」がどれくらいかを測る指標にピッタリだという。
「ちなみに僕のマイ辛値は1.97KM。2前後がちょうどよくて、3を超えるとだいぶ苦しく、4以上は1口でギブアップという感じですね。食べるときの体調とも相談しながら、今日はちょっと攻めてみようとか、そういう楽しみ方もできる。ユーザー同士だと『これは3.5KMくらいだね』『今日は4KM超えの店行ってみない?』と、もうこの単位なしでは会話が成り立たないくらいに機能してます。海外のデータはまだ少ないですが、いずれは韓国、タイ、インドなど、食べたくてもどのくらい辛いのか怖くて頼めないという悩みをなくしたいと思ってます」
映画監督ならではの発想力から生まれた画期的な単位「辛メーター」。これからの季節の“辛活”に役立ちそうだ。
辛メーターアプリ:http://karameter.com/qr/app
辛メーター公式WEBサイト:http://karameter.com