ダルビッシュ翔、幻に終わったボブ・サップ戦 地下格闘技でのデビュー戦振り返る

大リーグ・パドレスのダルビッシュ有投手の弟・ダルビッシュ翔さんは大阪の西成で炊き出しのボランティア活動を続けている。10年前は格闘家として複数の大会に参戦し、アントニオ猪木氏の団体で“超獣”ボブ・サップとの対戦も浮上していた。格闘家としての経験はどう生きているのだろうか。

デビュー戦を振り返るダルビッシュ翔【写真:ENCOUNT編集部】
デビュー戦を振り返るダルビッシュ翔【写真:ENCOUNT編集部】

けんか自慢集結 金網でのデビュー戦を振り返る

 大リーグ・パドレスのダルビッシュ有投手の弟・ダルビッシュ翔さんは大阪の西成で炊き出しのボランティア活動を続けている。10年前は格闘家として複数の大会に参戦し、アントニオ猪木氏の団体で“超獣”ボブ・サップとの対戦も浮上していた。格闘家としての経験はどう生きているのだろうか。

 翔さんが格闘家としてデビューしたのは、2012年だった。地下格闘技の大会で、会場は住之江区の造船所跡地に作られたライブ施設。リングは脱出不可能な金網で、出場選手は地下格闘技らしい腕自慢、けんか自慢が集まっていた。セコンドも含めて、血気盛んな男たちがいまかいまかと獲物を待ち構えていた。

 異様な熱気が充満する中、翔さんは惜しくも勝利を挙げることができなかった。会場の外に出て、うずくまってぼう然とした。日が沈んだ薄暗い大阪湾に打ち寄せる波の音が聞こえていた。

 181センチの背丈で、体重も100キロを超えていた。ヘビー級の新星として視線を集めた23歳には、猪木氏も注目。前もって別の日に面会しており、勝てば、大みそかにサップ戦が実現するかもしれなかった。

 ただ、当時を振り返った翔さんは、「地元に格闘技のジムができて、僕らもちょっとやんちゃしていたから、結果的に試合だったっていうぐらいで、格闘技で頂点とか何か本気で目指すことはなかったんですよ。ただ、漠然と出ていたっていう感じですかね」と淡々と話す。その後、格闘技のベースを学び直し、THE OUTSIDERなどで2試合を闘い、1勝1分。キャリア3戦で終えている。周囲の期待とは裏腹に、本腰を入れて格闘技で大成しようという気持ちは薄かったようだ。

 それでも悔いはない。逆に短期間でも格闘技を経験したことは前向きに捉えている。

「それまで自分は何も続けたことがなかったし、そういうふうに何かに挑戦したことがなかったんですけど、挑戦できてよかったなとホンマに思っていますね。自分の志(こころざし)道場というジムの前会長には、ホンマに厳しい方だったけど、そういうことを教えられてすごい感謝しています」

 熱中できるものを探していた。「何も考えてなかったな、若いときは」。子どもが生まれ、日銭を稼ぐために働いた。何事も継続することが難しいといわれる中で、西成に通い、炊き出しを50週にわたって続けられるのは、10年前に学んだことが原点にある。

 くしくも、猪木氏も年末に炊き出しを開催するのが恒例だった。ホームレスや生活困窮者の自立支援を目的に、13年連続で新宿の公園に足を運び、食事や衣料品を提供した。「僕らも年末やろうと思ったけど、今回はやらなかったですね。子どもらがいるし家でゆっくりしようかなと思って」。あれから10年たっての意外な接点に、翔さんは不思議な表情でうなずいていた。

□ダルビッシュ翔(だるびっしゅ・しょう)1989年3月12日、大阪・羽曳野市出身。父はイラン人。2012年、Dark翔のリングネームで総合格闘技デビュー。現在はYouTuberとしても活躍。大リーグ・パドレスのダルビッシュ有は実兄。炊き出しは「大阪租界」が運営。食材の提供はSNSで受け付けている。181センチ、110キロ。

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