ブレーク寸前の実力派俳優・味方良介、日テレ新ドラマ「初恋の悪魔」で刑事役 熱く語った役者像
舞台演劇からテレビドラマに出演の場を広げている実力派俳優がいる。味方良介だ。林遣都と仲野太賀がダブル主演を務め、16日にスタートする日本テレビ系新ドラマ「初恋の悪魔」(毎週土曜、午後10時)では、組織に従順ながら同僚には“嫌味”な刑事役で出演。「僕にはこの世界しかない」と、演技に磨きをかけることに余念のない情熱家だ。話題作に出演ラッシュでブレーク寸前の29歳に、熱い思いを聞いた。
日テレ土曜ドラマ「初恋の悪魔」で刑事役、つかこうへい追悼舞台で主演
舞台演劇からテレビドラマに出演の場を広げている実力派俳優がいる。味方良介だ。林遣都と仲野太賀がダブル主演を務め、16日にスタートする日本テレビ系新ドラマ「初恋の悪魔」(毎週土曜、午後10時)では、組織に従順ながら同僚には“嫌味”な刑事役で出演。「僕にはこの世界しかない」と、演技に磨きをかけることに余念のない情熱家だ。話題作に出演ラッシュでブレーク寸前の29歳に、熱い思いを聞いた。(取材・文=吉原知也)
本作は、林が演じるヘマをして停職処分中の刑事・鹿浜鈴之介、仲野演じる総務課・馬淵悠日、松岡茉優演じるスカジャンスタイルの生活安全課・摘木星砂、柄本佑演じる会計課・小鳥琉夏の“訳ありの4人”をメインキャストに、刑事とは違った感性と推理で難事件を解明していくミステリアスコメディーだ。味方は、佐久間由衣が演じる真面目な新人刑事・服部渚の先輩刑事である口木知基役だ。刑事課の捜査方針に従順ながら、ひとクセあるという。取材日は役衣装のスーツでビシっと決めていたが、どんな役柄なのか。
「何と言いますか、警察官にあるまじき役柄です(笑)。反論したい思いはあるのだろうけれども、長いものにちゃんと巻かれて、でも下には厳しいみたいな。いまの時代では全部アウトの役だと思っています。組織の中では完全に出世するタイプ。ただ、周囲からは嫌われるタイプです(笑)」
役作りのスタイルは興味深く、リアルなやりとりを見せる舞台をやってきた演劇人らしい。それは本作の演技にもしっかりと生かしているという。
「僕の場合は、役作りはあまりしないようにしているんです。その時その時の演者やスタッフさんとの人間関係の中で構築していくことを意識しています。撮影には、衣装さん、照明さん、音響さんもいて、周りに共演者の皆さんがいて目の前にカメラがあります。その関係値だけでできることが多々あると思っています。もちろん台本をちゃんと読んだ上で、あまり事前に作り込まないようにしています。自分の中のイメージ像だけにならないよう、その日その瞬間の演技を大事に、相手とのせりふの掛け合い、空気感の中で作っていければと考えています。今回で言うと、佐久間さんとのやりとりの中で、その場の温度感や空気感の中で、僕はどう演じれば、どんな風にせりふを言えば、嫌味になるかな、口木という人間を立てることができるかなと考えながら取り組んでいます」
名うてのメインキャスト4人を見ていて、強く感じることがあるそうだ。
「4人の皆さんはお芝居についてすごくよく考えて、大切に向き合って役を作っていき、そして、作品そのものを大事にしていることを実感しています。太賀君は高校の同級生なのですが、演劇に向き合う姿勢は人一倍強いです。遣都君は『教場』(フジテレビ系)で共演した時から丁寧な役作りのプロセスを見てきています。それに、皆さんは休憩中でもずっと『こういう映画がある』といった演技に関する話をしているんです。すごくすてきな人たちだなと思っています」
脚本は、「東京ラブストーリー」などのヒットドラマを書き下ろした名脚本家の坂元裕二が務める。事件解決ものながら、それこそラブストーリーの要素も入り混じった独特の作風になりそう。ドラマを楽しみに待っている視聴者へのメッセージは。
「1話1話の台本を読む瞬間が楽しいんです。せりふだけでなく、ト書きまで面白く、こんなにワクワクするんだというぐらい。今まで見てきた坂元さんの作品の世界観がどうやって台本で成り立っているのか、自分の手に取って見られるという喜びです。その反面、これをどうやって形にするんだろうという難しさも感じています。先の展開が楽しみで、宝物のように思っています。息が詰まることなく見入ることができる作品だと思います。それに、どのキャラクターにもどこかに自分を投影できる部分もあって、それでいて非現実的。このドラマを通して、有意義な土曜日の夜の時間を過ごせるのかなと思っています」
十三回忌を迎えた演出家の故・つかこうへいさんの追悼公演である「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」(18日まで、東京・紀伊國屋ホール)で主演の銀ちゃんこと倉岡銀四郎役を務めている。紀伊國屋ホール春の恒例公演「熱海殺人事件」では5回木村伝兵衛を演じており、巨星・つかさんについて聞くと、思いをとうとうと語り出した。
「ここ6年ぐらい、つかさんの作品をやらせていただいています。それでも僕は実際に会ったことがないんです。会ったことがない中で、つかさんの作品を紡いで、こうして時を経て十三回忌で蒲田行進曲を紀伊國屋ホールでやる。それも、銀ちゃんを演じるのは責任重大です。『俺、会ったことねえのにな』という悔しさがむちゃくちゃあるんです。一生、正解は分かりません。でも、正解が出ないからこそ、尊敬する作品と言葉を、自分たちが思う形で届けようと現場でずっと話しています。共演者の(お笑いコンビ「NON STYLE」)石田明さんとも話しています。『でもだからこそ、俺たちがやれることを不正解でもいいからどんどんかましていこうぜ』って。つかこうへいは生きている、演劇は生きている、と思ってもらえたら。もがきながら舞台に立っています」
「僕の中では舞台はホームという感覚。自分をチューニングできる場所」
舞台を中心に活動し、ドラマの場に移ってきた。2つの“世界”を行き来する経験を生かし、演技力を高めているという。
「演技という点では同じですが、それぞれの手法に違いがあります。舞台は、みんなで生の空間を共有して演者の一挙手一投足を見せていきます。映像の場合は、撮ったものをいい形で編集して完成させて視聴者に届けます。舞台は集中力、ドラマは瞬発力が大事です。僕はありがたくも、両方の経験を生かすことができています。数年前までは映像作品をやっていなかったですが、舞台では知り得なかった表現方法を、映像の現場で知ることができます。例えば、映像で『こういう繊細な動きも切り取ってもらえるんだ』という発見があった時に、それを舞台に取り入れることもあります。ただ、基本は映像ではできないことを舞台でやりたいし、舞台ではできないことを映像でやりたいと思っています。僕の中では舞台はホームという感覚。自分をチューニングできる場所です。それが整った時に、映像の世界に行ってまた新しいものを注入して、またチューニングをしに舞台に戻る。そういったイメージです」
4月期ドラマは4本に登場。7月期はテレビ東京系ドラマ「復讐の未亡人」にも出演する。今後も話題作への出演がめじろ押しだ。起用に役柄をこなす“カメレオン俳優”という評価もある。
「僕はあまりそういった周りの情報を意識しないタイプではあるので、皆さんにどういう風に受け取ってもらえているのかは分かってはいませんが、いろいろな役柄をやらせてもらう中で、やっぱり僕1人の力じゃないということを感じています。脚本があって、演出家の方がいて、衣装さんもヘアメイクさんも皆さんの力があってこそ、僕はそのキャラクターに変化(へんげ)できています。皆さんのおかげで、僕はストレスなく、いろいろなキャラクターに挑戦できています。ずっとトライアンドエラーを繰り返しています」
これから役者として目指すものは。そう聞くと、また、熱血漢にギアが入った。
「僕にはこの世界しかなくて。小学生の頃からこの世界のことだけを考えてきて、他の職種は僕の中にはないです。僕の人生を変えてくれたものは演劇です。演劇に恩返しができ続ける人生だったらいいなと思っています。返しても返しても返し切れないぐらい、たくさんの幸せをもらっていますし、苦しい時間ももらっています。少しずつ少しずつ恩返しをして、舞台芸術というものがもっと広がっていくこと、そのための1ピースになることができればと思っています。死ぬまで舞台に立っていたいです。もちろんドラマ・映画を含めて、演じることをずっとやっていけたら。ビッグスターにならなくてもいいとも思っています。ただただ続けていくこと。自分の演技を通して誰かに影響を与えられる人生であったなら、僕は満足できるのかなと思っています」
取材を受ける傍らに、けん玉が置いてあった。それも新品だ。素顔が垣間見えるこんなエピソードを最後に教えてくれた。
「NON STYLEの石田さんの影響で、ハマっているんです。5年ぐらい前に初めて共演した時に、石田さんが現場でやっていてむちゃくちゃうまくて。それで、興味を持ちました。僕はまだ下手くそですけど、ずっと練習しています。実はけん玉は、膝を使って上下運動をするので、結構汗をかくんですよ。なので、舞台の前のアップによくやっています。けん玉は落としたり折れたりするので消耗品でもあるので、家に10本近く持っています。実はきょう持ってきたのは、石田さんにもらったばかりの新しいものなんです。けん玉は奥深く、技が無限大にあって難しい。『宇宙遊泳』という技が得意ではありますが、上達は少しずつ少しずつです。舞台は稽古したらその分だけ成長できます。けん玉も同じで、練習したらその分だけ成果が付いてきます。稽古と練習は裏切らない。けん玉もまさにそうなんです」
□味方良介(みかた・りょうすけ)、1992年10月25日、東京都出身。身長176センチ。2011年、ミュージカルコンサート「恋するブロードウェイ♪」でデビュー。舞台演劇を中心に活動し、2020年から本格的にテレビドラマにも出演。