【鎌倉殿の13人】三谷脚本の魅力全開の前半 後半で気になる“大泉レベル”の後継者

小栗旬が主人公・北条義時を演じるNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜午後8時)。7月3日放送の第26回で源頼朝(大泉洋)の最期が描かれた。10日は放送が休みだが17日の放送から新章がスタートする。義時が主人公としてより一層、存在感を増すと思われるが、その前に、これまでの「鎌倉殿の13人」の魅力を振り返ってみた。

北海道でトークイベントを行った大泉洋【写真:(C)NHK】
北海道でトークイベントを行った大泉洋【写真:(C)NHK】

小栗旬が主人公・北条義時を演じるNHKの大河ドラマ 17日から新章スタート

 小栗旬が主人公・北条義時を演じるNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜午後8時)。7月3日放送の第26回で源頼朝(大泉洋)の最期が描かれた。10日は放送が休みだが17日の放送から新章がスタートする。義時が主人公としてより一層、存在感を増すと思われるが、その前に、これまでの「鎌倉殿の13人」の魅力を振り返ってみた。

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 作品の前半の魅力は何と言っても大泉洋が演じた軽さと重さを兼ね備えた魅力的で存在感のある頼朝の描き方。脚本家・三谷幸喜氏は俳優が決まってから脚本を当て書きするようだが、大泉ならではの、そして、これまでの大河ドラマには登場しなかった新たな頼朝像になったと感じる。

 演じた大泉は6月26日に北海道で行われたトークイベントで三谷氏について「三谷さんは当て書きで、役者を決めてから脚本を書いていくので、今回の『鎌倉殿の13人』の頼朝は、僕にしか出せない頼朝であったのは間違いない。三谷さんは、私をもちろん面白く描いてくれるけど、どっかで、悪いことしている役にすることが多いんですよね」と語った。自分の新しい引き出しを開けようとしてくれるとも語り、三谷氏への感謝も述べていた。また、三谷氏の描く頼朝には「勉強していくと、こんなにも教科書には載っていない厳しい決断をたくさんした人と知らなかったので、大変な人を演じるんだなっていう覚悟はありました」と明かしていた。

 三谷氏はバランス良くコミカルな要素を作品に織り込み、視聴者をくすっと笑わせることがうまい。今回の頼朝も第25回では、赤が不吉な色とされる設定が描かれると、間もなく頼朝の周りにたくさんの赤いホオズキが飾られた。征夷大将軍になった際には、政子(小池栄子)と息の合ったコンビネーションで、満面の笑みで大喜びするなどコメディーにまではならない範囲の絶妙なバランスで視聴者を笑わせ、楽しい大河ドラマを作り上げた。コミカルシーンは大人だけでなく子どもも楽しめた。

 もう一つ、今回の三谷脚本の魅力は、現代語をいいタイミングとバランスよく活用していること。大河ドラマに堅苦しさや難しさを感じる若い世代にも親しみやすい作品になったと思う。絶妙なバランスのおかげで大河ドラマの雰囲気はしっかり感じられた。

 さらに、大泉もトークイベントで語っていたことだが、頼朝がさまざまな厳しい決断をしてきた中、なぜ義経や範頼ら弟まで殺さねばならなかったのかということも、よく伝わる描き方だったと思う。あの時代、鎌倉殿の座を狙う者、または、後継者として近い人間を殺さなければ自分の命が危なかった。生き残れなかった。そんな中で生き抜く頼朝は何を信じ、どんな思いで生き抜いていたのか。三谷氏も以前、取材会で話していたが、相当、孤独だったのではないかと想像させられた。

 前半に感じた三谷脚本の魅力はもう一つある。義経の最期の瞬間の場面を映像で直接的に描かなかったが、しっかりと義経の死と周囲の悲しみが伝わったこと。三谷氏はこれまでの取材で「菅田将暉さんが演じることを前提に描いた義経像ですが、最期を迎えるときにどんな描き方がいいか考えたとき、僕は菅田さんの義経が自ら命を絶つ瞬間を見たくなかった。できれば最期のシーンは笑っていてほしかった。僕のイメージする義経のこれ以上ない幕の引き方だった」と語っていた。脚本の力とともに三谷氏の優しさも感じ取ることができた。

 また、頼朝が落命した第26回では、頼朝は中盤まで何度か登場したが、ほとんど話すことはなかった。昏睡状態という設定で意識のないままずっと横になっていたからだ。現実か幻想か不明だが、中盤に入ってから一言だけ政子に語りかけたシーンの後、旅立った。つまり大泉は第26回では、中盤までほとんど寝たまま、せりふがないままの出演だった。それでも不思議と存在感を感じた。大泉のことだから、三谷脚本だから何が起こるか分からない。そんな期待感を持っていたからだ。

 前半は、これまでの大河ではほとんど見ることのなかった作り方をしながらも、これまで築かれてきた大河の風格のようなものを壊すことなく視聴者を楽しませてくれた。後半に向けて1つ気がかりな要素があるとすれば、火花を散らす権力闘争の中で、コミカルな要素が引き続き盛り込まれるかどうかだ。コミカルシーンが継続するなら、前半で大泉が威力を示したコミカルシーンを誰が引き継ぐかだ。これまでも他の出演者たちも十分にくすっと笑わせてくれたが、コミカルシーンでの大泉の力、存在は大きかった。頼朝の後継者も重要だが、コミカルシーンでしっかり力を発揮してくれる大泉の後継者も大事な気がする。

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