武尊「目標は1つある」 ならば復帰はK-1か、MMA転向か、天心との再戦は…? 

立ち技格闘技K-1のエース・武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)が27日、都内のホテルで記者会見を行い、休養することを表明した。引退を考えたというが、心身を休めて再起を期すと約束した。果たしてその舞台はどこになるのだろうか。

武尊【写真:山口比佐夫】
武尊【写真:山口比佐夫】

心身のオーバーホールを経て、戻ってくるのはリングかケージか

 立ち技格闘技K-1のエース・武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)が27日、都内のホテルで記者会見を行い、休養することを表明した。引退を考えたというが、心身を休めて再起を期すと約束した。果たしてその舞台はどこになるのだろうか。(文・角野敬介)

 ファンも、関係者も、ホッとしたかもしれない。那須川天心との“世紀の一戦”の前には負ければ引退を示唆するような発言をしていただけに、もう武尊の姿を見ることはできないのでは――。そんな見方も少なくはなかったが、武尊が“休養”という選択肢を選んだのはSNSに届いたファンからの「やめないで」「一生応援します」という声だったという。

「そうやって言ってもらったから、僕も一つ決心することができて。負けた時は正直悔しさもあったし、これで終わりだなという気持ちもあったし、だけどやっぱ心のどこかでやり返したい気持ちもあったし、なんか本当に色々な気持ちになったんですけど、この10年プロでやってきて、本当に僕のファイトスタイル的にも身体を酷使してきたし、公表してない部分でもけがに悩まされた部分もあって、それも含めて、今回、格闘家として歩みをストップさせたくなって、休養させていただこうかと」

 心身ともに限界。満身創痍だった。拳の怪我に腰椎分離すべり症、パニック障害にうつ病……。勝ち続けたこの10年間、武尊は相手だけでなく、自らとも戦い続けていた。

 だからこそ、オーバーホールが必要だった。「この10年はちょっと無理しながらでも、やってきた。1回僕の心と体のコンディションを正常に戻して、新しいチャレンジができたらなという気持ち。1回ここで戦う舞台からは離れようと思うんです」という選択は誰もが納得できるだろう。

武尊【写真:山口比佐夫】
武尊【写真:山口比佐夫】

天心との「戦いは一生続いていくと思っている」

 気が早いのかもしれない。だが気になる。休養ならば、では復帰のリングはK-1なのだろうか。記者からの問いに、こう返答した。

「目標ができた。それはちょっとまだ形にもなっていないし、何も進んでいないので、ここではまだ言いたくはないが、目標は1つある。それに向けても心と体を治したいと思っています。体を治すにも目標が必要」

 武尊ははっきりと「目標は1つある」と言った。

 ライバルだった天心はボクシングへ転向する。ストーリーの続きはあるのか。

「この試合は1度だけで2度やる必要はないと言っていて、だからこそ意味がある。天心選手はボクシングに行って、階級も変わっていくと思うし、そうですね……。100%気持ちが固まっているわけじゃないので、断言はしたくないんですけど、天心選手との戦いだけじゃなくて、直接的な戦いじゃない戦いもある。そういう意味でも新しい戦いがあると思っていて。戦いは一生続いていくと思っている」

 言葉を選びながらも、天心との対戦は「1度だから意味がある」とした。武尊の目には映っていないように見える。

 ならば、本人がかねてから興味を示していたMMA挑戦もありえるのか――。別の記者から出た「UFCへの挑戦という噂を聞いたが」という問いにはこう返した。

「今は何も答えられない。1週間経って気持ちも毎日揺れ動いていて、毎日考えていることも変わるし、1つ決心はしたんですけど、明確に何ということを考えないようにしているし、心の中で1つ目標を作ろうと思った、UFCだけじゃなくて、色々な可能性があると思った。1回心と体を最高の状態にして、その時にはまたみんながワクワクして心躍らせてくれるような、格闘技界が最高に盛り上がるようなお話ができたらいいなと思っています」

武尊が2度目の敗戦で「負けることへの恐怖がなくなった」

 武尊にとって1つだけ確かなことがある。3668日ぶりに喫した敗戦。

「今回の試合で一番学んだこと、毎日負けることが怖くてこの10年間恐怖と闘っていたなと。試合の時は笑って楽しんでいるんですが、それ以外の時間は苦しさと恐怖しかなかった。それは心から格闘技を楽しめてなかったと思うし、苦しさや恐怖に支配されていた。無駄ではなかったと思うんですけど、今回こうやって約10年ぶりに負けてその時に知れたことは本当に僕の中で大切なものに気づけた。これで1つ強くなれたんじゃないかと。負けるということの価値判断が変わった。負けることへの恐怖がなくなった分、もっと思い切って戦えるんじゃないかと。もっと強くなれると確信した」

 来月29日には31歳を迎える。格闘家としては決して若くはない。それでも2度目の敗戦が気づかせてくれた。まだ自身に伸びしろがあることを。

 休養中もトレーニングは続ける。海外で充電しながら、自分と向き合う時間を作るという。再び戻ってくるのがリングだろうが、ケージだろうが、武尊は必ず強くなって帰ってくる。

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