大鶴義丹、25歳になる一人娘を“溺愛” おねだりLINEは「“パパりん”で始まります」

東京・新宿ゴールデン街近くにある花園神社境内で、劇作家で芥川賞作家の唐十郎が作劇した舞台「下谷万年町物語」が行われている。紫テントで25日まで繰り広げられるステージには、俳優の大鶴義丹(53)が出演する。新宿梁山泊とともに、父が手がけた舞台に出演する大鶴に思いを聞いた。

大鶴義丹【写真:山口比佐夫】
大鶴義丹【写真:山口比佐夫】

東京・花園神社で男娼らがテント公演「猥雑な世界を楽しんで」

 東京・新宿ゴールデン街近くにある花園神社境内で、劇作家で芥川賞作家の唐十郎が作劇した舞台「下谷万年町物語」が行われている。紫テントで25日まで繰り広げられるステージには、俳優の大鶴義丹(53)が出演する。新宿梁山泊とともに、父が手がけた舞台に出演する大鶴に思いを聞いた。(取材・文=西村綾乃)

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 物語の舞台は昭和23年(1948年)の東京。上野と鴬谷の真ん中に位置する「下谷万年町」にある八軒長屋で暮らす男娼たちを描いたもの。蜷川幸雄が演出、大鶴の母で女優の李麗仙と俳優の渡辺謙が81年に初演した。

「金守珍さんが率いる新宿梁山泊は、親父の劇団から別れた集団で毎年花園神社で公演をしているんです。僕はもう12年くらいお付き合いがあるのかなぁ。コロナ禍で舞台が中止されたこともあって、3年ぶりの出演になります。今年『下谷万年町』を再演しようというのは、僕が提案したことでもありました」

 3年ぶりに新宿梁山泊とともに立つステージ。なぜ同作を再演しようと思っただろうか。

「この作品は、旧パルコ劇場(東京都渋谷区)の立ち上げとして初演されものでした。僕が初めてこの舞台を見たのは、中学2年生の時。父は芥川賞を獲った後で、脂が乗っていたころ。親父の作品は観念的で難しいものが多いのですが、『下谷万年町』はエンターテインメント要素が強くて比較的分かりやすい。大きな劇場で上演されることが多かったのですが、実はこの作品はテントに戻りたがっているのではないかと思い代表の金に昨年持ち掛けていました」

 男性娼婦などが出てくる作品。大鶴の役どころは――。

「僕は白井という男を演じます。舞台に描かれている上野の不忍池界隈は、うちの父が戦後に過ごしていた場所。ここにあった長屋街には、男娼がたくさんいたそうです。貧しい暮らしを送っていた家は、家賃を手に入れるために男娼たちに、夜の間だけ部屋を貸し出したところもあったそう。描かれている人々の暮らしは父が、実際に見聞きしていた事実です。舞台では、現代に生きていた主人公が戦後の長屋街にタイムスリップする話として展開していきます。僕は男娼たちに当時合法だった麻薬を流すやくざの役。戦後の騒乱と猥雑な世界を、おどろおどろしいテントの中で繰り広げられるミラクルな話を、楽しんでいただきたいです」

 今年1月には10年ぶりの長編小説「女優」を上梓。登場する大女優は、昨年6月に亡くなった大鶴の母・李麗仙の姿が重なる。

「2021年に文芸誌『すばる』に3回に渡って連載し、ことし1月に書籍化しました。小劇団を運営する男(主人公)の母は、昭和を代表する女優。高齢になったいまは表舞台から離れていたのですが、息子の舞台に出演することになって。母と息子の間には、距離があった初めての共演で、心が近づいていく時間がある。僕自身も小劇場に関わっていたので、リアリティがあると受け取っていただけていることがうれしいです」

 10年ぶりの長編小説を経て、今後書いてみたいものは。

「文芸誌で考えていることがあります。自分にあることしか書くことができないタイプなので、実体験に基づいたことになっていくと思います。50代になってやっと親子のことを書くことができたので、これからは夫婦のことに目を向けてみたい。僕はたまたま2度結婚したこともあるので、この不思議な“ゲーム”に興味があります。誰が最初に始めたんだろうというところから、さかのぼってみたい。奥さんに言うと『あなた面倒くさい』と言われます。『女優』は息子としての目線ですが、僕も今年25歳になる娘がいる親なので、自分が親の立場で子どもへの思いも考えてみたいですね」

 大切な一人娘。周囲からは「猫かわいがりしている」と注意されていると苦笑いする。「パパは私が何か言えば、言うことを聞くと思っているけれど、イヤな気分はしない。欲しいものがあるときは。LINEの始まりが『パパりん』で始まります。メッセージを見た瞬間に、『強盗が来た!!!!!』と思うんですけどね。『ちょっと話したい』と言われたら断れません」と目を細めた。

□大鶴義丹(おおつる・ぎたん)1968年4月24日、東京都生まれ。日本大学在学中の88年に映画「首都高速トライアル」で俳優として本格始動した。90年には「スプラッシュ」で第14回すばる文学賞を受賞。小説家としても活躍している。95年には映画「となりのボブ・マーリィ」で監督としての活動も開始。公式YouTubeチャンネル「大鶴義丹の他力本願」も人気だ。10年ぶりの長編小説「女優」(集英社)を2022年1月26日に上梓。父は劇作家、芥川賞作家の唐十郎。母は女優・李麗仙。NHK Eテレ「ワルイコあつまれ」に準レギュラーとして出演中。

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