【THE MATCH】「笑ったらこのパンチが来る」 天心が見つけていた武尊のクセ、必然だった勝利

“世紀の一戦”から一夜明けた。結果は、キックボクシング界の“神童”那須川天心(TARGET/Cygames)が“ナチュラルボーンクラッシャー”武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)に判定勝ち。試合前は「武尊が勝つ」との声も多くみられ、終わった後も格闘技を知らない層からは「YouTubeチャンネルもやっているのに意外だった」などの声も上がっていた。なぜ天心は武尊に勝つことができたのか。試合後の会見で「THE MATCH」に懸けていた思いを明かした。

最後の試合後会見を行った那須川天心【写真:ENCOUNT編集部】
最後の試合後会見を行った那須川天心【写真:ENCOUNT編集部】

「右のジャブはキーポイント」

“世紀の一戦”から一夜明けた。結果は、キックボクシング界の“神童”那須川天心(TARGET/Cygames)が“ナチュラルボーンクラッシャー”武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)に判定勝ち。試合前は「武尊が勝つ」との声も多くみられ、終わった後も格闘技を知らない層からは「YouTubeチャンネルもやっているのに意外だった」などの声も上がっていた。なぜ天心は武尊に勝つことができたのか。試合後の会見で「THE MATCH」に懸けていた思いを明かした。

 戦前の予想以上に、天心が明確に武尊を上回った。なかでも印象に残ったのが天心の繰り出すリードジャブだ。最初から最後まで効果的にジャブを当て、主導権を握った。天心は「あれは作戦通り。右のジャブはキーポイント。あそこから組み立てることができた」と振り返った。

 それだけではない。にくらしいほどに冷静だった。「相手のセコンドの声も聞こえていて『ジャブは捨てろ』って言っていました。なので、あえてジャブを踏み込もうって思いきり打てました」と作戦を説明した。

 1R終盤には武尊からダウンを奪った。カウンターの左ストレートで試合は天心に大きく傾いた。「会心の左ストレートでしたね。コンパクトに狙う。大きくならないで刀のように刹那というか。最後に確認したパンチです」と打ち明けた。

 また天心の右目を襲った2R途中のバッティングも試合の流れを変えたポイントだ。明らかに動きが変わっていた。「集中力が切れてはいないですけれど、ちょっとやべーってなって。視界がぼやけて、左はみえるけど、右目がだぶちゃったから。3Rもずっとぼやけていました」とも明かした。

「負けたら死のう」文字通りの覚悟

「負けたら死のうと思って、遺書みたいな動画を撮っていた」。天心も文字通り“覚悟”を決めて臨んだ試合。ボクシング転向はいったん封印し、この一戦だけに全てを注いできた。

「ボクシングっていうものも考えていなかった。これに全部を懸けようと思っていた。そうじゃないと勝てないし、そうじゃないと戦えないし。だから、次はないと思ってた」

 最強はひとりでいい。かつて憧れた武尊を徹底的に研究した。

「武尊選手は笑ったらこのパンチが来るとか、笑ったらこういう動きするというそういうクセも研究してきました。(実際に対峙したときは)うわ、武尊だって感じ。何倍も何倍も強い武尊をイメージしていました。実際は思っていたよりも小さく見えた。そう思えたのが勝てた原因だと思います」

 打倒武尊への思いは人一倍強い。他の選手との試合は「ワクワク感がなかった」と打ち明ける天心を本気にさせた。

「この人に勝てば本当に強いって認めてもらえる。やっぱり世間からもお互いいろいろ言われたし、選手同士がやりたいのにできないっていうのがあったので。この試合に勝てば俺は強い、ってことでいいのかなって」

 15歳でデビューし“神童”と呼ばれ続けてきた少年は23歳になった。最強のキックボクサーであることを証明し、次のステージへと向かう。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください