育児のSNS投稿は毒親に当たる? 専門家からは“デジタルタトゥー”との指摘も
「毎日かあさん」などの作品で知られる漫画家・西原理恵子氏の娘が、実名ブログで「お母さんは、私が泣いて嫌がっても作品に描いた」「なぜ書いて欲しくないと言ったのに、私の個人情報を世間へ向けて書き続けたのか」と告発、ブログは現在削除されているが、大きな話題となっている。SNS全盛の時代、我が子の成長の喜びや育児の不安などを投稿する行為はありふれているが、これらを“デジタルタトゥー”として忌避する人も多く、今回の騒動でハッと我に返ったという親も多いのではないだろうか。子どものプライバシーはどこまで守られるべきなのか。成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子氏に聞いた。
娘が実名ブログで「お母さんは、私が泣いて嫌がっても作品に描いた」と告発
「毎日かあさん」などの作品で知られる漫画家・西原理恵子氏の娘が、実名ブログで「お母さんは、私が泣いて嫌がっても作品に描いた」「なぜ書いて欲しくないと言ったのに、私の個人情報を世間へ向けて書き続けたのか」と告発、ブログは現在削除されているが、大きな話題となっている。SNS全盛の時代、我が子の成長の喜びや育児の不安などを投稿する行為はありふれているが、これらを“デジタルタトゥー”として忌避する人も多く、今回の騒動でハッと我に返ったという親も多いのではないだろうか。子どものプライバシーはどこまで守られるべきなのか。成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子氏に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
「3歳の誕生日に近所のケーキ屋さんで買ったケーキ。生まれてきてくれてありがとう」「今日は娘の保育園の入園式。まだおむつ取れないけどなじめるか不安」。ツイッターやインスタグラム、フェイスブックで検索をかけると、文章や写真、イラストなど次々と出てくる育児関連の投稿。子どものほほ笑ましいエピソードや子育ての不安などをつづったエッセー漫画も人気コンテンツとなっている。一方でさまざまなリスクから、こうした行為に「子どもの許可を取らない、取れない年齢で発信するのは毒親」「虐待と変わらない」という声も。子どもの情報をSNSを通じて世界中に発信することには、どのようなリスクがあるのだろうか。
「まず、写真の悪用や誘拐などの直接的な被害が考えられます。プールの水着写真など露出の多いものは実際にそのまま児童ポルノサイトに転載された事例もありますし、他人の子どもの写真を騙ったなりすまし投稿をされたり、投稿された情報から通学路や住所が特定され、誘拐されるリスクもあります。誕生日を祝う投稿があれば生年月日が分かりますし、近所のお店や制服を着た写真、『電車止まってる』などの投稿から学校や駅を割り出すこともできる。一般人のアカウントだと通常はわざわざ特定したりしませんが、悪意を持った人間や、ふとした投稿が炎上したときなど、何か起きたときには特定すること自体は現代では容易にできてしまいます」
犯罪に巻き込まれる危険があるのならもってのほかだが、仮にそういった直接的な被害につながらなくとも、子どものプライバシーの観点からも安易な投稿は控えるべきだという。一度投稿された画像や情報がネット上で複製・拡散され残り続けるデジタルタトゥーには、どのようなケースがあるのか。
極力使わない方がいいように思える一方、メリットも
「おもらししたなどのエピソードや裸の写真など、本人が成長してから『嫌だ』と思うものであれば種類は問いません。完全匿名であれば問題ないと思われるかもしれませんが、先ほどのように特定は決して難しいことではない。最低限、公開範囲を信頼できる友人に限定したり、実名や名前を推測できる愛称は避けたり、顔写真公開は個人が判別できない年齢までにしたりすることが大事です。公開する場合も、本人から『消して』と言われたらただちに削除すること。親は子を守るべきであり、自分の承認欲求のために勝手に発信してはいけません」
個人特定の恐怖や我が子との今後の関係を考えたら極力使わない方がいいようにも思えるSNSでの育児投稿。だが、一方でメリットもあると高橋氏は言う。
「保護者がSNSに子どもの投稿をする気持ちは分かるし、メリットもあります。私も子どもが小さな頃は限定公開で公開していたことがあります。そのくらいワンオペ育児や母親の孤立化はきつくて、同じ年頃の子の親や先輩ママと交流したり、情報を得たりと、SNSが救いになっている人は多いのです。また、フォロワーが多く影響力のあるアカウントやエッセー漫画が、『自分だけではない』と思えて、誰かの支えになっているということも大いにあります。ただ、有名であればあるほどデジタルタトゥーのリスクが高まるのも事実。たとえば発達障がい児の育児エッセーなどは本当にセンシティブな問題です。発信するからにはある程度の覚悟を持って、上手に使うことが大切だと思います」
我が子の情報をどこまで発信し、どこまでプライバシーに配慮すべきなのか。答えのないSNS時代の育児の在り方は今後も議論を呼びそうだ。