“性暴力”をスキャンダルで終わらせない NHKが映画業界の闇に切り込む「問題は2つ」
NHK「クローズアップ現代」(月火水曜、午後7時30分)が映画界で相次いでいる性暴力の告発を取り上げる。「封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~」(14日放送)と題するものだが、NHKがどこまで映画界の闇に切り込むのか。
14日放送「クローズアップ現代」 韓国の事例を紹介しながら対策を考える
NHK「クローズアップ現代」(月火水曜、午後7時30分)が映画界で相次いでいる性暴力の告発を取り上げる。「封じられてきた声 映画界の性暴力~被害をなくすために~」(14日放送)と題するものだが、NHKがどこまで映画界の闇に切り込むのか。(取材・文=平辻哲也)
番組では2019年から、たびたび性暴力の問題を取り上げてきた。ホームページでは「性暴力を考える」という特集ページもある。今回の特集は3月から週刊誌で告発が続いているのを受けての企画という。チーフプロデューサーの天野直幸氏は「どうして性暴力が起こるのか、どうしたらなくすことができるのか、韓国の事例を紹介しつつ対策も考えていきたい」と語る。
NHKでは「痴漢、セクハラ、性的DV、SNS性被害、レイプ…。望まない性的な言動はすべて“性暴力”」と位置づけ、性別の違いはない。今、映画界で起こっている性暴力の告発は業界特有のものなのか。「それはまさに精査、分析中ですが、問題は2つあるのではないかと考えています。1つはハラスメントを許容する文化になってしまっているのではないか、ということ。もう1つは安心して相談できる窓口が用意されていないこと。特に俳優さんを含め、フリーランスの方々は声を上げづらい立場にあるのではないか」と天野氏。
映画界の性暴力問題は以前から世界中に存在していたが、SNS時代になって、顕在化している。韓国では16年に大きな問題になり、相談窓口の設置や予防教育も進んでいる。ハリウッドでは17年に、「恋におちたシェイクスピア」でオスカー作品賞を受賞した映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン氏が女優や部下に起こした性被害が「me too運動」として広がった。18年には世界三大映画祭で数多くの賞を受賞した韓国のキム・ギドク監督(20年、ラトビアで客死)が起こした女優たちへの性暴力が大々的に報じられたこともあった。
番組では、韓国での事例や性暴力撲滅へ声を上げている監督などの取り組みも紹介し、解決への糸口も提示していくようだ。筆者は、この問題で大きく欠けているのは、業界トップの当事者意識、業界全体としての意思表明や取り組みではないか、と思っている。それが、チーフプロデューサーがいう「ハラスメントを許容する文化」になっているのではないか。
「映画業界といっても、プロ、学生のような方々もいて複雑。しかも職種が多岐にわたっていて、ひとくくりに言うのが難しいという背景もあるんじゃないかと思います。その中で、どうやって声を上げていくか、難しい部分もあるんじゃないか。業界をリードする立場の方がしっかり取り組んでいくべきだという意見はその通りだと思います」(天野氏)
番組では問題をスキャンダルだけで終わらせないため、構造的な問題として捉えることを試みるほか、俳優以外への被害の広がりについても独自に取材を進めているという。番組の内容に注目だ。また、ツイッターで意見も広く募るそうで、ハッシュタグは #映画界の性暴力 #クロ現。