陣内孝則が明かすトレンディードラマ舞台裏「渋谷スクランブル交差点でゲリラ撮影」

映画「ALIVEHOON アライブフーン」(公開中、下山天監督)で、ゲーマー出身のドリフトレーサーの主人公(野村周平)を見守る俳優の陣内孝則(63)。1980年代から90年代にかけては、トレンディードラマで一時代を築いた。しかし、当時を振り返ってもらうと、意外な言葉が……。(取材・文=平辻哲也)

トレンディーだった80年代を語る陣内孝則【写真:舛元清香】
トレンディーだった80年代を語る陣内孝則【写真:舛元清香】

映画「ALIVEHOON アライブフーン」公開中 見どころは本物のカーアクション

 映画「ALIVEHOON アライブフーン」(公開中、下山天監督)で、ゲーマー出身のドリフトレーサーの主人公(野村周平)を見守る俳優の陣内孝則(63)。1980年代から90年代にかけては、トレンディードラマで一時代を築いた。しかし、当時を振り返ってもらうと、意外な言葉が……。(取材・文=平辻哲也)

 1982年に「ザ・ロッカーズ」のボーカルとしてデビューし、ソロとしても活動した陣内。本業以外で輝いたのはドラマの世界だった。時はバブル経済、真っ只中。出演作は数多くあるが、特に三上博史、柳葉敏郎、浅野ゆう子らと共演したフジテレビの月9「君の瞳をタイホする!」(88年1月期)、小泉今日子共演の学園ラブコメディーの月9「愛しあってるかい!」(89年10月期)が印象深い。

「あの頃はとにかく仕事しかしていなかった。立て続けにドラマ、バラエティーの仕事があって、朝から深夜まで。今と違って、働き方改革の時代じゃないから、“27、28時”という、ありえない時間まで撮影をしていた。無我夢中で過ごしていたという感じですよ。よく、『バブル期に、いい思いをしたでしょう?』って言われるんだけど、全然いい思いはしてない。仕事ばかりだったから。今思うと、何か地に足のついてない時代だったかな。昔の作品を見ると、山ほど反省するんだけど、あのときにしか出せない色気とか、あのときにしか出せないキレ、勢いがある。あの時代はあの時代で一生懸命やっていたんだな、と思いますね」。

「君の瞳をタイホする!」は渋谷の街を舞台にした刑事ドラマなのに、ほとんど事件は起こらない刑事ラブコメ。トレンディードラマの元祖というべき作品で、その後の月9路線を決定づけた。

「ただ撮影はホント、いい加減でしたね。渋谷のスクランブル交差点で、平気でゲリラ撮影をしたりしていた。交差点のシーンでは、こっちを指さしている人がいるんだけど、平気でオンエアで使っているんですよ」。

 無許可のゲリラ撮影がなんとなく許される、ゆるい時代でもあったのだ。

「スタッフから、『いきなり、(スクランブル交差点の)交番に入ってください』と言われたこともある。『許可取っているんですか』と聞くと、『いや、取っていない。何か聞いてきてください』って。それがトレンディードラマ、月9ですよ。抵抗したんですけど、それでも『交番に行って、とにかく敬礼して帰ってきてください』というんで、“どうしたらいいんだ”って思いましたね。仕方ないので、交番のおまわりさんのところに行って、『すみません、今、刑事ドラマを撮ってるんですけど、敬礼ってどういうふうにしたらいいですか?』と聞いて、(敬礼を見せてもらうと)、なるほど、こうですか! (敬礼のポーズをして)、分かりました! ありがとうございます! と言って、戻ってきた。今じゃ、考えられないですよね」と笑う。当時、鍛えられたことが陣内の今につながっているのだろう。

 最新出演作の映画「ALIVEHOON アライブフーン」は、崖っぷちのドリフトレーシングチームが、eスポーツのドリフト王者を迎え入れて、頂点を目指す本格カーレース・ストーリー。ドリフト界の第一人者、“ドリキン”こと土屋圭市氏が監修。CGではない、本物のカーアクションが見どころになっている。

□陣内孝則(じんない・たかのり)1958年8月12日、福岡県出身。82年に「爆裂都市 BURST CITY」で俳優デビュー。「ちょうちん」(87)で第12回報知映画賞主演男優賞、第30回ブルーリボン賞主演男優賞、第11回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。「極道(やくざ)渡世の素敵な面々」(88)と「疵」(88)でも第12回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。主な映画出演作に、「さらば愛しのやくざ」(90)、「河童」(94)、「種まく旅人~みのりの茶」(2012)、「超高速!参勤交代」(14)などがある。監督作品として、「ロッカーズ」(03)、「スマイル~聖夜の奇跡~」(07)、「幸福のアリバイ~Picture~」(16)がある。

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