NHKのドキュメンタリー番組「100カメ」（火曜午後11時）が、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」（日曜午後8時）の撮影現場や舞台裏などに潜入して密着取材した。「100カメ」は気になる場所に100台の固定カメラを設置して人々の生態を観察する番組。14日放送の「100カメ」で取材した様子が紹介されるにあたり、このほどディレクターの大木莉衣さんとプロデューサー・桜井和紀氏が、取材に応じ現場の様子を語った。「100カメ」が取材したのは、12日午後8時から放送される「鎌倉殿の13人」の第23回の現場。曽我兄弟の敵討ちの舞台となった「富士の巻き狩り」がテーマ。3月下旬に広大な富士の裾野で100人超のエキストラを起用した大規模な巻き狩りのロケが行われた。

　大木さんは「ワンカットごとに、たとえば脚本にイノシシと書かれているとイノシシを撮らないといけないとか、1文字、1行であっても、その世界観を実現するために、どれだけの労力がかかっているのか分かりました」と舞台裏の大変さを語った。実際に走るイノシシを撮影するため、ドラマのスタッフは茨城県内の動物プロダクションまで足を運び、泥まみれになりながら苦労して走るイノシシを撮影した。ドラマで使用されたのは2カット4秒だった。

　大木さんは、大河ドラマファンに向けて14日放送の「100カメ」での注目ポイントを紹介してくれた。「1つ目はイノシシの撮影。ロケの現場と違う場所で撮っているので、どういう角度で撮れば違和感なく、映像がつながるかを考えて（ドラマチームは）挑んでいました。イノシシを追いかけるのも大変。尊敬の念も込めて印象に残っています」。2つ目には「お弁当の発注、宿の発注、テントを張る人、スタッフにはいろんな人がいることを分かるように入れています」。さらに「後ろの方に映っているエキストラの方にも細かい演技指導をしたりする様子を見て（ドラマチームの）こだわりを感じてもらえたら」と続けた。

　また、大木さんは取材で感じた「鎌倉殿の13人」の魅力も紹介。「人間らしさが見えます。ただ歴史を追うのではなく、人間模様が見えるのが魅力かと思いました」と紹介。また、ドラマチームの魅力にも言及。「大変な現場でもみんなジョークを言ったり、面白い会話をはさんだり、緊張感を持ちつつピリピリしないようにいい意味で気を使っていたのが印象的でした。チームワークの良さが現場作りに生かされていると感じました」とした。

「100カメ」がスタッフルームやロケ現場、エキストラの支度などを撮影した総時間は約1000時間。番組のために約30分にまとめた。

　桜井氏は「何が映っているのか、編集室で全部の撮影素材を見ないと分からないんです。目をさらにしてみて、音を聴いて、そこから最後30分にまとめる。大変な作業」と紹介した。

　ロケが行われた3月は、富士の裾野では雪が積もったり、スタッフのテントが嵐で吹き飛びそうになったりと撮影は困難を極めた。そんな環境にドラマのキャストもいた。

　桜井氏は「雨から雪に変わり、我々は防寒をしっかりして行きました。キャストの皆さんは薄着で、足元はわらじというか草履。主役の小栗旬さんをはじめ皆さん当然、寒いと思うのですが、それをおくびにも出さずに現場でたたずんでいらっしゃる姿は、プロフェッショナルだと感じました」と感激していた。

「鎌倉殿の13人」の清水拓哉チーフプロデューサーは「100カメ」の取材映像を見て、「僕自身はロケ現場に行っていませんが、スタッフみんなが必死になって、（ロケを）成立させようとして、頑張って、何とか無事に撮ってきてくれたなと胸が熱くなりました。みんなこういうところでこんなふうに頑張っているんだと大変、胸が熱くなりました」と語った。