現在も「人と目を合わせて話すことは苦手」。しかし、スイッチが入ればそれは「楽しい」に変わる。「芸人の世界ってルールが明確。旗が上がっているみたいで『ここで話します』というのが見えやすい。楽屋とかだと話せないんですけれど、自分の人生で1番話しやすい場所が平場です。人と話せる楽しさがあります」と声色は明るい。

　番組のひな壇で芸人がみせる連係プレーは目を見張るものがある。自衛隊時代の経験が生かされていた。

「芸人の世界は先輩に何でも任せられるし、なんでも拾ってくれる、何してもいいというギャップが楽しい。今、先輩芸人さんのことを信頼しているは自衛隊時代もそうだったからだと思います」

　肩書や衣装から“自衛隊ネタ”の印象が強いが最近では、トークにも挑戦している。見た目のイメージが先行してしまっていることに、以前は葛藤があった。

「自分を客観視するとキャラクター化しています。自分がぼけたりとかお笑いを取りにいっていることよりも、今は『かわいい』といった反応が多い。それは違うなという思いはありました。泥臭くお笑いを取りに行きたかったけれど、でも今はそれでいいんだと。『かわいい』と言ってくれるそういう方々のおかげで仕事ももらえているんです」

　まだ23歳、野望はある。「トークライブをやりたいです。イメージはまだないと思うんですが、『千原ジュニアの座王』とかの1分トークで勝ったりとかしているんです。一歩ずつでも尊敬する千原ジュニアさんに近づいていけたらと思います」と目を光らせた。

　さまざまなところで語る「アンパンマンみたいな芸人になりたい」の真意についても打ち明ける。

「今はどこにいっても芸人の猛者たちがすごいんです。例えば『笑い飯』の西田幸治さんとかには大喜利で絶対勝てない。でも、せっかく同じ環境にいるんだったら、自分は“やす子”がいるだけで明るさとか元気を与えられる存在になれたらと思います」

　興味がなかったからこそ王道ができる――。この言葉に一切の迷いはなかった。“とがり”は確かにおもしろい。でも自分には必要はないと割り切れる勇気もあった。芸歴3年目ながら自分の役割を俯瞰して見られる姿は、大物感をただよわせていた。

□やす子、1998年9月2日、山口県生まれ。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。2017年から19年まで2年間、陸上自衛隊で勤務。2019年8月にピン芸人としてデビューし、21年の元旦に放送された「おもしろ荘2021新年SP」（日本テレビ系）で3位になる。同年1月の「サンデー・ジャポン」（TBS系）ではレポーターに挑戦。