紅一点で麻雀に明け暮れた学生時代 京大→ロースクールの人気女流雀士・松嶋桃の素顔
今後は「心が健康に生きていられたら」
そんな過酷な環境への進学となったわけだが、松嶋にとって苦労ばかりではなかったようだ。
「行ってみてよかったんですよ。自分に(法曹界は)向いていないと分かったから。そこで初めて『好きなことを仕事にしよう』と考えるようになりました」
このとき、松嶋にとって初めてプロ雀士が職業としての選択肢に挙がった。
「京都にいたことも大きいんですけど、麻雀プロがそんなにメジャーな時代ではなかったですし、女性は特に少ない時代でした。そのときまでは選択肢にはなかったんですけど、初めてそこで自分のやりたいことについて考えたんですね。考えた結果、麻雀プロが(選択肢に)挙がってきました。こんなに続けられたものなかったし、たびたび『プロにならないの?』って言ってくれた麻雀プロの方もいたので、そこですごく現実味を帯びてきました」
自らの進みたい道を見つけた松嶋だったが、ロースクールの卒業までが「一番つらかった」時間だったという。
「自分に法律家が向いていないって分かってからは特に勉強するのが大変でしたね。親にもモラトリアムを延長してもらった手前、留年は許されないから、絶対に勉強しなきゃいけなかったんです。目標に向かうのは割と得意なんですけど、その目標がそこじゃないとなってから、あの2年が一番つらかったです。試験勉強とか、夏休み最終日の小学生みたいに、泣きながらやっていました。『なんで私こんなことしなきゃいけないの~』みたいな感じで。全部の顔を立てるために、仕事のように勉強しました」
紆余曲折を経て「好きなことを仕事にする」という決断に至った松嶋。それまでの経験を生かした結果としての今がある。プロ雀士になってからは、プレイヤーだけでなく、麻雀実況やクイズ番組への出演など幅広い分野で活躍を続けている。今後の目標について聞いた。
「麻雀、麻雀実況、クイズと全部いいバランスで活動できていて、今がすごく楽しいんですよね。目標がない人間の強みとして、『なんでもできる』っていうのがあると思うんですよ。それぞれを現状以上にブラッシュアップさせたいですね。目の前のものをちゃんと一つ一つこなした先に今があると思っているので。結果としていい縁に巡り合って、今のポジションにいると思っています。これからも目の前のこと一つ一つちゃんとやっていったうえで、心が健康に生きていられたらいいです(笑)」
麻雀に出会ってから嫌いになったことはないという松嶋。「ずっと好きでやっていたことなので、自然とこれまでやってこれました。すごく向いていたんでしょうね」と明るく語る。全ての経験を積み重ねてきたからこそ、自らの天職に出会えたのだろう。
一つ一つの経験を生かした先にどんな活躍を見せるのか、今後の松嶋からも目が離せない。
□松嶋桃、1984年9月16日、愛知県生まれ。京都大学法学部卒。同志社大学法科大学院修了。2010年からプロ雀士(日本プロ麻雀協会所属)として活躍中。麻雀プロリーグ戦「Mリーグ」、「RTDリーグ」など数多くの麻雀実況を務める。「パネルクイズ アタック25」30代女性大会の優勝をきっかけに、クイズ番組にも多数出演。クイズ作家の古川洋平氏らによるYouTubeチャンネル「カプリティオチャンネル」にレギュラー出演中。