相次ぐ有名レスラーの事故、どう防ぐ? 蝶野正洋、対戦相手と情報共有「あっていい」
興行優先の流れにメス 選手の自己責任だけにしないルール整備が必要
蝶野が挙げたのは3つの改善案だ。
1)選手同士の情報の事前共有
2)主催者側の責任の明確化
3)レフェリーの独立
1)について、蝶野は「レスラーの健康状態を全部チェックしたら、けががない選手は誰もいない」と断言する。自らも首に爆弾を抱えながら長年、闘ってきた。大なり小なりの負傷を選手が抱える中で、それを前もって共有するシステム作りが必要と訴える。闘う前に、選手同士が故障個所の情報を共有することも「俺はそれはあっていいと思う」と容認する。
「けがをさせることが目的ではないんだから、もし相手の故障箇所がある程度分かっていれば、そこは攻めずに試合を組み立てていけばいい。事前にある程度の情報をお互いに知っておくことでも全然変わってくると思う」と話した。
2)については、選手の体調管理をしっかりと主催者にさせる目的がある。事故が起こった場合、選手個人や対戦相手に責任がいきがちだ。しかし、金銭的な補償も含めて、主催者も一定の割合を負うとなれば、誰でも選手を出場というわけにはいかなくなる。「興行を優先すると、どうしても名前と名前の勝負になっちゃうから、チケットを売るときにはコンディションはあんまり関係なくなっちゃう。ただそこは、主催者側が責任を持つ。そうじゃないと、自分たちが蓄積したけがで今日偶然アクシデントが起こったんでしょうという言い逃れになっちゃう」と指摘。
自己責任だけにしないルール整備が必要とし、「選手のケアも含めて、現場でのけがも含めてちゃんと運営に責任を持たせる。今は一プロモーター的な人たちが単発興行とかやるじゃないですか。そういうときに事故が起きたときなんかは、(責任は)誰がっていうのがたぶん出てきちゃうと思うんですよね」と続けた。
3)については、「レフェリーがルール、レフェリーイコールプロレスを競技させる人なんだから、ここは団体所属にしちゃダメだと思う」と自論を展開する。レスラーが社長を兼ねる場合、体調が悪そうに見えても自らが申告しない限り、欠場を進言できる人はまずいない。それを解決させるのがレフェリーの独立だという。
「レフェリーの組織を別に作って、もう明らかにちょっとおかしいなというときには、その興行関係なしに試合を止める。選手は興行を考えるから、やっぱりいかに試合を成立させるかというのが頭の中で働くし、特にメインイベンタークラスはその思いが強い。だから自分の体は二の次になったりするんですよね。そこを止めるのってレフェリーしかいないんですよ。今はレフェリーもメインイベンターと同じ演奏者になっている。レフェリーは指揮者でなければいけない。そこを切り離すには1回、組織から外すしかないんじゃないかなと思いますね」
いずれにせよ、これ以上、悲劇が繰り返されるのはあってはならないこと。業界全体を挙げての早急な対策が求められる。
□蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)1963年9月17日、東京都出身。84年、新日本プロレスに入門。黒のカリスマとしてnWoブームをけん引。99年、ファッションブランド「ARISTRIST(アリストトリスト)」を設立。2010年に退団。現在はYouTube「蝶野チャンネル」が人気を集めるほか、NWHスポーツ救命協会代表理事、日本消防協会「消防応援団」、日本AED財団「AED大使」、日本寄付財団アンバサダーを務める。5月24日~30日までそごう千葉店でアリストトリストPOP UP出展、29日に蝶野来場によるプレミアムイベントを開催。