相次ぐ有名レスラーの事故、どう防ぐ? 蝶野正洋、対戦相手と情報共有「あっていい」

リング上の事故はどうなくせばいいのか。プロレス界が今、大きな岐路に立たされている。ゼロワンの4・10両国国技館大会で、大谷晋二郎(49)がコーナーへのスープレックスでたたきつけられた後、動けなくなり、病院に救急搬送された。頸髄損傷と診断される重傷で、現在も入院しながら闘病生活を送っている。マット界で相次ぐ名のあるレスラーの事故。同大会でアンバサダーを務めた蝶野正洋(58)に対処法を聞いた。

リング上の事故防止へ3つの対策を訴えた蝶野正洋【写真:ENCOUNT編集部】
リング上の事故防止へ3つの対策を訴えた蝶野正洋【写真:ENCOUNT編集部】

不安だった大谷の体調 「あの試合をするレベルの体調ではなかった」

 リング上の事故はどうなくせばいいのか。プロレス界が今、大きな岐路に立たされている。ゼロワンの4・10両国国技館大会で、大谷晋二郎(49)がコーナーへのスープレックスでたたきつけられた後、動けなくなり、病院に救急搬送された。頸髄損傷と診断される重傷で、現在も入院しながら闘病生活を送っている。マット界で相次ぐ名のあるレスラーの事故。同大会でアンバサダーを務めた蝶野正洋(58)に対処法を聞いた。(取材・文=水沼一夫)

 当日、解説席から大谷の試合を見ていた蝶野は「体調は良くないのは分かっていた。メインイベントの、あの試合をするレベルの体調ではなかったと思う。歳とキャリアとけがの状態からいえば、あそこに上げるべきじゃなかったよね」と話し、試合は回避すべきだったとの見方を示した。

 ここ20年で、名のあるレスラーのリング上での事故が続いている。三沢光晴さん(09年)、高山善廣(17年)、ハヤブサ(01年)と、リング上のアクシデントによる頚髄や頸椎の負傷が原因で帰らぬ人となったり、日常生活もままならないほどの重傷を負った。いずれもプロレス経験も豊富で人気もあった各団体のエース級が並ぶ。プロレスファンは事故のたびに悲しみ、また、どこか釈然としない思いを抱いてきた。

 そして、再び「なぜ?」が起こった。

「大谷選手とは両国の前に2、3回会っているんですよ」。昨年9月、左腕を骨折した大谷は長期欠場後、4月3日の栃木大会でリング復帰した。AED講習のため、蝶野も会場におり、大谷と言葉をかわしていた。両国大会前の状態を、客観的な目で追っていた検証結果が、冒頭の発言となっている。

 何より左腕の回復具合を気にかけていた。加えて、エース級ならではの激務がコンディションの調整不足に輪をかけていたと分析する。

「特に橋本(真也)選手とか三沢社長は経営とリング、それから自分のことと、何個もやらなきゃいけない立場だった。その中で絶対に削っていくのは、治療をまず削っちゃうんですよね。治療を削って練習を削るから、コンディションを維持できなくなる。(ゼロワンも)経営状況は良くないという話は聞いていたから、やっぱり営業であったりだとか、経営であったりとか、そっちのほうをつぶさないためにどうすれば、ということを大谷選手も考えていたと思います」

 橋本さんは05年、脳幹出血で倒れ他界した。リング上での事故ではないものの、社長として団体存続に腐心し、その心労がたたったといわれた。団体の経営にも携わる選手は、スポンサーとの関係構築やチケットの営業活動などリング外の仕事も多い。経営が傾けば、さらに治療やトレーニングの時間は削られる。練習一本に専念できるレスラーとは異なり、リングに上がれる体作りがおろそかになりかねないと蝶野は主張する。

 では、そういった選手の事故を未然に防ぐには、どうしたらいいのだろうか。

次のページへ (2/4) 興行優先の流れにメス 選手の自己責任だけにしないルール整備が必要
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