湿布の代わりに馬肉、医学的には「効果なし」 産地・熊本県も「貼らずに食べて」

「湿布の代わりに馬肉を貼ると治りがよくなる」「おでこに馬刺しを乗せると熱が下がる」など、おいしく食べるだけでなく、古くから民間療法としてさまざまな治療に用いられてきた馬肉。4月に完結を迎えたばかりのアイヌ文化をテーマにした人気漫画「ゴールデンカムイ」でも、けがを負った主人公の杉元佐一にヒロインのアシリパが馬肉をあてがう場面が描かれているが、はたして“馬肉湿布”に医学的な根拠はあるのだろか。

おいしく食べるだけでなく、さまざまな民間治療に用いられてきた馬肉(写真はイメージ)【写真:写真AC】
おいしく食べるだけでなく、さまざまな民間治療に用いられてきた馬肉(写真はイメージ)【写真:写真AC】

古くから民間療法としてさまざまな治療に用いられてきた馬肉

「湿布の代わりに馬肉を貼ると治りがよくなる」「おでこに馬刺しを乗せると熱が下がる」など、おいしく食べるだけでなく、古くから民間療法としてさまざまな治療に用いられてきた馬肉。4月に完結を迎えたばかりのアイヌ文化をテーマにした人気漫画「ゴールデンカムイ」でも、けがを負った主人公の杉元佐一にヒロインのアシリパが馬肉をあてがう場面が描かれているが、はたして“馬肉湿布”に医学的な根拠はあるのだろか。

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「ゴールデンカムイ」で馬肉湿布が登場するのは単行本3巻収録の第20話「喰い違い」。1人で敵陣に突撃しケガを負った杉元に、「腫れや内出血を鎮静させる効果があると聞いた」とアシリパが馬肉を投げつけ、その後オソマ(≒みそ)味の桜鍋を食べて仲直りするという印象的な一場面だ。

 1999年のプロ野球日本シリーズでは、初戦で死球を受けた元ダイエーホークスの秋山幸二さんが、王貞治監督から湿布代わりに差し入れられた馬肉を食べてしまい、チームを球団史上初の日本一に導いたという逸話が残っている。日本一の馬肉の名産地で秋山さんの出身地でもある熊本県は2016年、県のPR動画で秋山さん本人を起用し当時の逸話の再現VTRを作成。動画内では「※熊本県は馬刺を湿布として使用することは推奨しておりません」という注釈がたびたび入るものの、馬刺しの湿布=「バサシップ」として馬肉の栄養価の高さを大々的に宣伝している。

 この他、大相撲の朝青龍関や柔道家の谷亮子選手も現役時代に使用した逸話が残っており、人気漫画の「巨人の星」や「ゴルゴ13」などでも同様の描写が見られるなど、よく知られた馬肉湿布だが、医学的な根拠はあるのか。元プロボクサーで産婦人科医の高橋怜奈医師は「正直に言って、医学的に認められた効果はありません」と断言する。

「湿布には解熱鎮痛成分や抗炎症成分が含まれており、患部に貼ることでこれが浸透し炎症を抑える効果があります。一方、馬肉にはそういった成分は含まれていませんし、仮に何らかの効果がある成分が含まれていたとしても経皮吸収されることはほぼありません。患部を冷やすにも氷などの方が効果が高く、皮膚に貼るよりは間違いなく食べたほうが効果的です」(高橋医師)

 残念ながら医学的にはまったく根拠がないようだが、一方で食用としては非常に栄養価の高い食材だという。

「脂質が少なく高タンパクでダイエット向きの食材です。鉄分やカルシウムは豚肉や牛肉の3~4倍もあり、鉄分は同量のほうれん草よりも多く含まれており貧血予防や体を疲れにくくする効果があります。ビタミン類も豊富で、脂肪を燃焼させるLカルニチンも含まれており、各競技のアスリートやボディービルダーなどにも人気です。私もよく食べますが、唯一価格が高いのが難点ですね。湿布として使うにはもったいないと思います」(高橋医師)

「バサシップ」動画を制作した熊本県知事公室広報課の担当者も「当時の資料は残っておりませんが、あくまでもジョークCMと聞いております。動画内でもお伝えしておりますが、県としても湿布として貼るのではなく、ぜひ食べて味わっていただきたいと考えております」と話している。

※高橋怜奈医師の「高」の正式表記ははしごだか

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