「平成ベストソング」を考える 今だから推したい名曲たち、作曲家目線で選ぶ1位は?
意外にもMr.Childrenの楽曲は1曲のみのランクイン
ところで、今回のランキングの選者である令和世代にはスピッツの人気が高いようで、2曲がランクインしている。かたや、スピッツと同世代の国民的バンドMr.Childrenは圏外41位に名曲「Sign」がランクインしているのみである。ミスチルの場合は名曲が多過ぎて、票が散ったこともあるかもしれないが、やはり1曲は入れておきたいところ。筆者は「名もなき詩」(96年)に一票を入れたいが、皆さんはいかがだろう。
90年代を席巻した「ビーイング系」の楽曲群もランクインを逃した。B’zやZARD、大黒摩季、相川七瀬など、名曲や大ヒット曲の数々の中で、スタンダートとなっている93年のミリオンセラー、ZARDの「負けないで」を推したい。楽曲としての芯の強さが、今も心に響く。
昭和を代表するソングライター達、たとえば阿久悠、筒美京平などがランクインしていないのはやむを得ないとはいえ、「はっぴいえんど~ナイアガラ」人脈からも、松本隆が作詞し、山下達郎が作曲したKinKi Kids「硝子の少年」(97年)がランク外47位に入ったのみなのは、少しさみしい。大滝詠一や山下達郎、伊藤銀次といった、いわゆる「ナイアガラ人脈」からは、伊藤銀次がプロデュースし大ヒット、後世への影響も多大なウルフルズの「ガッツだぜ!!」(95年)のシーンに与えたラジカルな衝撃を今に伝えたい。
平成の音楽シーンで「アイドルグループ」が果たした役割は決して小さくない。それは名もないミュージシャンが「作曲家」として世に出る登竜門的存在でもあるからだ。
今回の選者にも名を連ねる「バグベア」が作曲し秋元康が作詞した欅坂46「サイレントマジョリティー」(2016年)は男性ファンはもとより、彼女達の同年代の少女たちにも圧倒的に支持された。そしてAKB48、13年のまさに国民的大ヒット「恋するフォーチュンクッキー」は日本のみならず、タイをはじめアジアでも大ヒットした。いかがだろう。やはり、「恋チュン」は外せないのではないか。
以上が、筆者から見た「平成Jポップ」の世界観である。
当然、まだまだ抜け落ちているジャンルや楽曲は多いと思う。もしよかったら、みなさんのおすすめの楽曲をコメントなどでご提案いただけたらうれしい。
さまざまな意見や異論もあるだろうが、今回の「関ジャム完全燃SHOW」のランキング企画は、Jポップという文化を次世代に継承していくにあたって、大変に有意義なものであったと筆者は考える。確かに多少バイアスがかったランキングではあるが、その「バイアス」こそが「関ジャム」の番組としての個性なのだろう。
それでも我々世代が親しんできた名曲たちが、次の世代に受け継がれていくのを見るのは、清々しい気持ちだ。これからは今回の選者のみなさんの楽曲が「令和」のシーンを引っ張っていき、時の洗礼に耐え、人々の心に残っていくのだろう。大きな期待を持って受けとめたい。
ちなみに、筆者にもし、投票権があるとするのなら、1位には奥田民生「さすらい」(98年)を選ばせていただきたい。奥田民生は、はっぴいえんど~キャロル~サザンオールスターズ~佐野元春と続く「日本語をポップスに乗せる」方法論の、平成の代表格であると考えるからだ。
□成瀬英樹(なるせ・ひでき)作詞・作曲家。1968年、兵庫県出身。92年、4人組バンド「FOUR TRIPS」結成。97年、TBS系ドラマ「友達の恋人」(瀬戸朝香・桜井幸子主演)の主題歌「WONDER」でデビュー。2006年、AAA「Shalala キボウの歌」で作曲家デビュー。AKB48提供「BINGO!」「ひこうき雲」、前田敦子「君は僕だ」「タイムマシンなんていらない」などがトップ5ヒット。16年、AKB48のシングル「君はメロディー」でオリコン年間チャート2位を記録するミリオンセラーを達成。21年、乃木坂46「全部 夢のまま」を作曲。
○成瀬英樹公式HP:https://hidekinaruse.com/
○YouTubeチャンネル「成瀬英樹のポップス研Q室」:https://www.youtube.com/channel/UC_RUkkST9KnBykcR9ZhTcpQ