精神科医が教える“本当は怖い”五月病 適応障害やうつ発症につながることも

精神科医で月に30社以上を訪問する産業医でもある井上智介医師
精神科医で月に30社以上を訪問する産業医でもある井上智介医師

本当に深刻な場合はストレスの根本の原因から距離を置く必要性も

「予防としては休みの日でも生活リズムを乱さないようにすること。普段の起床時間から2時間以内が許容範囲で、例えば平日が朝6時起きなら8時くらいには起きるのが望ましいです。治し方としては少なくとも1日7.5時間、しっかり寝ること。あとは一例ですが、お風呂の湯船に漬かる、帰宅したらスマホの電源をオフにする、朝に日光浴をするのも効果的です。リフレッシュできる趣味でもいいですし、何か一つでなく、複数の手段を用意しておくことが大事です」

 ただ、これらはあくまでもストレスからの回復手段に過ぎず、本当に深刻な場合はストレスの根本の原因から距離を置くことが必要になるという。

「社会人の場合、業務に支障をきたすようであれば仕事量を見直したり、上司に相談する。それでもダメなら休職や離職など、時にはきっぱり休むことも必要です。仕事を辞めてすぐに良くなる人も多いですが、一度うつになってしまうと治るまでに長い時間がかかりますから。子どもの場合、絶対にやってはいけないのが親が登校を無理強いすること。一度休ませると休みグセがついてしまうと考える親御さんもいると思いますが、適応障害はそんなに簡単に治るものではありません。家庭内の問題として悩まず、学校や行政など外部の人間に相談し、まずは親がメンタルを保つ余裕を持つことが大事です」

 世間では五月病による離職や不登校を「甘え」と捉える見方も強く、まだまだ理解が進んでいない面もあるが、「五月病≒適応障害で精神疾患の一つ。環境の変化次第で誰にでも起こりうるものです。上司から気にかけて新人が相談しやすい雰囲気を作る、産業医などいざというときに頼る場所の周知徹底をするなど、社内や家庭でも予防していくことが大切です」と井上医師。たかが五月病と侮ることなく、社会全体で関わっていくことが必要なようだ。

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