「eスポーツジム」が目指す“寺子屋”スタイル 社会性を育む場を提供「全世代がウェルカム」

ゲームを通じてコミュニケーションをとると語る代表取締役CEOの真鍋拓也氏【写真:ENCOUNT編集部】
ゲームを通じてコミュニケーションをとると語る代表取締役CEOの真鍋拓也氏【写真:ENCOUNT編集部】

ゲームを通じた原体験「周りの環境そのものが学びになる」

“ゲームを通じたコミュニケーション”を重視するeスポーツジムという業態の構想が生まれた背景は、真鍋氏がかつて広い社会に触れた原体験がある。

「私が中学生のとき、『ストリートファイター2』が出たんです。ゲームセンターで知らない人と対戦するという世界がすごく面白くて、ずっと通っていました。そのときに通っていたゲームセンターにはコミュニティーがあって、高校生、大学生、社会人、それにご老人も来ていました。もちろん男性も女性も関係なく、“格ゲー好き”が集まっていたんです。名前も知らないですし、本業も知らない。でも、ゲーム好き同士、ずっと対戦をやっていると仲良くなっていくんですよね。彼らとの関わりそのものが、すごく大きな社会勉強になっていたと、振り返ってみると思ったんです。

 いろいろな人にかわいがってもらって、今でも年上の人と話すのが億劫ではなく、気にならないんです。その経験から、ゲームの周りの環境そのものが学びになると思ったんですね。そして、大好きだったゲームが『eスポーツ』という形で2017~18年くらいからグッと盛り上がるかもしれない、となってきた。それなら私が体験した学びを、同じようにまた提供できるんじゃないかと。eスポーツでみんなが集まって切磋琢磨する場所、それってジムじゃないかということで、事業構築し始めたというのが原点になります」

 設立のきっかけとなった体験もあり、eスポーツジムではゲーム経験の多寡や年齢などによって“入りにくい”ということはない。事実、ジム生は「圧倒的に初心者が多い」と真鍋氏。コミュニティーマネージャーが個別に声をかけ、一緒にゲームが楽しめるように手ほどきし、利用者同士のゲームを通じた輪が広がっていく――。そんな場所と機会を提供している。

 また、コミュニケーションの側面を重視しているからこその取り組みとして、障がい者向けの就労施設と連携し、精神障がい者向けのプログラムも実施。内容はeスポーツを利用した就労支援だ。コミュニティーマネージャーの鈴木氏は、次のように実際の取り組みと効果を明かす。

「eスポーツを使ってはいますが、ゲームで楽しむ、遊ぶことが中心にあるわけではなく、コミュニケーションツールとして使って、一人一人の会話を引き出すということをやっています。例えばゲーム前のミーティング。あいさつをして、『今日はどういう目標にしましょうか』と話し合って決めて、実際にゲームをする。終わったときに、よかったことや改善点も話して、一人一人と話す場を設けて、みんなで聞き、場合によっては拍手もする。コミュニケーションの一連の流れを作って、反応するということを試合ごとにやっています。話題がなくて話せないということもないので、会話力はどんどん伸びていきます。最初は全然話せなかった方も、今はスラスラ話せていたりもします。

 堅いプログラム、イベントだと会話が進まない方でも、ゲームが一つの鍵となって会話が盛んになることがあります。例えば現在プログラムでプレイしている『リーグ・オブ・レジェンド』では負けたときに“誰か一人が悪い”とはならず、絶対に自分のミスの影響も出てきます。ちゃんと反省もできますし、逆にいいところも絶対にあるので、会話につながりやすいんです」

 eスポーツジムは幅広い世代や層がゲームを通じてコミュニケーションを取り、社会性を育む場になっている。賞金があって華やか、あるいは自分とは違う世界のものという印象を持たれがちな“eスポーツ”だが、もっと身近な存在になってもいい。真鍋氏は今後、シニア層の開拓がチャレンジ領域になるとして、次のように語った。

「ぱっと見、子どもたちや若い人たちの場所だと思われるみたいで、シニア層にはなかなか入ってきていただけないところはあります。でも、シニアの方も含めて全世代の方がウェルカムです。ぜひ入ってほしいと思っていますし、理想的にはお孫さんと一緒にトレーニングして、対抗戦に出るという楽しみをしてほしいですね。『初キル、うちのおじいちゃん!』とか(笑)。

 今後は、eスポーツは特定の人がやるものだと思われないような世界にしたいですね。例えばボウリングのような、“誰がやってもいいもの”というイメージを広げていきたいと思います」

 eスポーツジムの料金体系は月額5500円か、都度利用の3時間1430円で、「VALORANT」「リーグ・オブ・レジェンド」など人気eスポーツタイトルを取り扱っている。“食わず嫌い”せずにeスポーツの世界を体験するなら、これ以上ない場所と言っていいだろう。

□eスポーツジム
・料金体系
月額:5500円 都度利用:3時間1430円
・取り扱いタイトル
VALORANT、リーグ・オブ・レジェンド、レインボーシックス シージ、PUBG MOBLILE、アイデンティティV/第五人格、ぷよぷよeスポーツなど
・アクセス
東京メトロ南北線「赤羽岩淵」駅3番出入口地上部すぐ

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