「死に際を撮ってもらいたい」アントニオ猪木氏を50年撮り続けるカメラマンが見た素顔
“燃える闘魂”アントニオ猪木氏(79)を50年にわたり撮り続けるカメラマン・原悦生さん(66)が50年間の記録と選りすぐりの写真を収めた書籍「猪木」(辰巳出版 G SPIRITS BOOK vol.17、税込み2530円)を出版し、話題になっている。“キューバ革命の英雄”フィデル・カストロ議長との会談やイラク人質解放にも同行するなど、猪木の歴史を第一線で目撃してきた。猪木信者も、そうでない人も、これを読めば改めて気づかされるであろう猪木のすごみ。原さんが見た猪木氏の魅力と、知られざる素顔を語ってもらった。
「言葉は怖かった」あいさつがわりのシャッター
“燃える闘魂”アントニオ猪木氏(79)を50年にわたり撮り続けるカメラマン・原悦生さん(66)が50年間の記録と選りすぐりの写真を収めた書籍「猪木」(辰巳出版 G SPIRITS BOOK vol.17、税込み2530円)を出版し、話題になっている。“キューバ革命の英雄”フィデル・カストロ議長との会談やイラク人質解放にも同行するなど、猪木の歴史を第一線で目撃してきた。猪木信者も、そうでない人も、これを読めば改めて気づかされるであろう猪木のすごみ。原さんが見た猪木氏の魅力と、知られざる素顔を語ってもらった。(取材・文=水沼一夫)
――秘蔵写真が満載で、大ボリュームですね。
「“私だけが見ていたアントニオ猪木”というのが売りかなと思うのですが、猪木さんとの旅って、旅をしていた時間は長いんですけど、会話そのものってそんなにしていないんですよ。いつも飛行機の座席の脇で2人で寝ていたので(笑)。たまに起きたときに、ちょこちょこと話をして、また寝てしまう。猪木さんが何か思いついたように話して、あーみたいな感じで、大して受け答えもしないで、またどっちかが話して…、そういう繰り返しだったんですよね。だからいわゆる、一般的なずっと話を聞くみたいな旅ではなかった。ただ見てきたということは本当なんですけども」
――初めて猪木さんを撮影したのはいつでしょうか?
「新日本プロレスの旗揚げ戦が終わってオープニングシリーズの8戦目に試合で水戸に来たんですよ。そのときに、カメラを持ってリングサイドで試合を撮りました。ダメと言われなかったんで、普通に。高校1年生の春休みですかね」
――それから50年、猪木番として撮影した。
「今はだいたい、写真を撮るときにみんな言葉をかけますけど、私は言葉は怖かったので、何も声をかけずにいきなりシャッターを押すほうでした。例えば猪木さんが会場に来ると、フッと入っていって、あいさつする前にまず1枚シャッターを切るんですよ。何枚か切った後に、あーみたいな感じでちょっと話し始めるというパターンでしたね。不思議な関係です」
――シャッターがあいさつ代わりに。
「まずシャッターを押して、何枚か撮ってからですね。昔のカメラなので大きな音がしますから、猪木さんも撮られているのは分かっているけど、そのまま普通にしていました。たまに気がついたように、わざとらしいポーズも取ってくれるときもあるんですけど、私はわざとらしいポーズじゃないほうが好きでした。だから声かける前に撮った写真のほうが、自分的にはいい写真がありましたね。声をかけて撮ると、どうしても構えちゃうし、不意打ちというか、視線がちゃんとこなくても私はよかったです」