NiziUの新曲「ASOBO」MVテーマは“受容”と“包摂” 末っ子NINAの成長を描くストーリー

9人組ガールズグループ・NiziU(ニジュー)の新デジタルシングル「ASOBO」のミュージックビデオ(MV)をめぐってネット上ではファンによるホットな考察や謎解きが繰り広げられている。12日にYouTube公式チャンネルで公開された同MVは学校を舞台に繰り広げられる青春と友情がテーマ。カラフルなセットとコンピューターグラフィックス(CG)を駆使したファンタジーあふれる映像で躍動感とスペクタクルな世界観をポップに表現。メンバーが「ASOBO」と歌いながら魔法をかけるかのようにステッキで「a」「s」「o」「b」「o」の文字を描く振り付けや「ASOBO」の頭文字である「A」の指ポーズなど楽しいシーンが散りばめられている。まさに遊び心満載の1曲だが、実はけっこう深いストーリーが盛り込まれているのだ。

NiziU「ASOBO」のMVが話題に
NiziU「ASOBO」のMVが話題に

カメオ出演の女性7人の正体は?

 9人組ガールズグループ・NiziU(ニジュー)の新デジタルシングル「ASOBO」のミュージックビデオ(MV)をめぐってネット上ではファンによるホットな考察や謎解きが繰り広げられている。12日にYouTube公式チャンネルで公開された同MVは学校を舞台に繰り広げられる青春と友情がテーマ。カラフルなセットとコンピューターグラフィックス(CG)を駆使したファンタジーあふれる映像で躍動感とスペクタクルな世界観をポップに表現。メンバーが「ASOBO」と歌いながら魔法をかけるかのようにステッキで「a」「s」「o」「b」「o」の文字を描く振り付けや「ASOBO」の頭文字である「A」の指ポーズなど楽しいシーンが散りばめられている。まさに遊び心満載の1曲だが、実はけっこう深いストーリーが盛り込まれているのだ。(取材・文=鄭孝俊)

 ハウスミュージックやリズムに特徴があるモータウンサウンドを取り入れたダンスポップジャンルの新作。開始から16秒ほどするとAYAKAの体の左右に「ホントすごいね!」「全然辛くない?」「秘訣でもあるの?」「燃え尽きたことはないの?」などの日本語短文が次々と現れる。しばらくすると、教室の中でさみしそうに1人ポツンと座る転校生で末っ子(韓国語はマンネ)のNINAの姿が。そこにRIKUが歩み寄り「ASOBO」と書かれたメモ書きを渡すのだった。MIIHIは言葉を発することのないNINAの手をとり、他のメンバーも全員登場して「一緒に遊ぼう」と笑顔で呼びかける。RIMAはNINAを連れて校舎内を案内し、AYAKAはNINAに洋服を選んであげる。友達がたくさんできたNINAは自ら新しいドアを開く。するとその部屋には目標を見失った7人の女子学生がそれぞれ孤立しているかのようにうつろな表情。今度はNINAがセンターに立って彼女らに「楽しくみんなで遊ぼう」と呼びかけるのだった。ラスト近くになると、孤独から脱却できたNINAが他のクラスメート(NiziUのメンバー)に囲まれてお菓子を手に取りステッキで円を2回描く。最初は寂しげだったNINAの表情がラストでは満開の笑顔に変化しており爽やかだ。

 NINAは米ワシントン州出身で父親は米国人、母親は日本人のダブルルーツ。NiziUを生み出した韓国のJYPエンターテインメントとソニーミュージックによる共同オーディション「Nizi Project」に応募したNINAは、プロデューサーのJ・Y・パーク氏に「自分は最初日本に来たときに全然日本語が書けなくて話せなかった。普通の日本の学校に通っていたのでみんなとコミュニケーションが取れなかったのがすごく悔しくて自分で努力して毎日勉強してしゃべれるようになりました。私は英語の方が話しやすいです」と明かしていた。

 日本に来た際、周囲の人たちとのコミュニケーションがとれず校内で孤立していたNINAの過去の経験は、「ASOBO」のMVの中でそのまま再現されているかのようだ。RIKUが「ASOBO」とローマ字で書かれたメモ書きを渡したのも、日本語が達者ではなかったNINAにも読めるようにするためだった、と考えれば腑に落ちる。“遊ぶ”ことを通して異なる文化的背景で育った人たちを受け入れる。また、一緒に“遊ぶ”ことを呼び掛ける周囲の支えと思いやりによってNINAは成長していく。そんなストーリーがMVの大きな柱になっているのだ。

 MV最後に紹介されるメンバーの役どころを見れば、制作意図がよりはっきりと分かるはずだ。そこには「転校してきたクラスメイト:NINA」「日直のクラスメイト:MAYUKA」「美化委員のクラスメイト:MAKO」「一緒に遊ぼうと声をかけてくれたクラスメイト1:RIKU」「一緒に遊ぼうと声をかけてくれたクラスメイト2:MIIHI」「学校案内をしてくれたクラスメイト:RIMA」「洋服を選んでくれたクラスメイト:AYAKA」「寮で相部屋になったクラスメイト1:RIO」「寮で相部屋になったクラスメイト2:MAYA」と各メンバーの役どころが紹介されている。

 遊び心ということで言えば、MV開始18秒あたりのAYAKAの歌唱パートでは画面左下の積み木カレンダーに「02」(ニ)と「10」(ジュー)の数字が見える。同46秒あたりのNINAの背景に映っている壁の「PHOTOZONE」にはNiziUの思い出の写真が並んでいる。また、同1分50秒過ぎにはNiziUメンバーではない女性が計7人登場している(11日に公開された「ASOBO」のTeaser4動画がより鮮明)。カメオ出演したこの女性たちをめぐっては同じJYPエンターテインメント所属でITZY以来3年ぶりの大型新人ガールズグループとして2月22日にデビューしたNMIXX(エンミックス)のメンバーではないか、とネットで取りざたされている。実際にデビュー曲タイトルの「O.O」の2文字は「ASOBO」に内包されている。「ASOBO」から「A」「S」「B」を抜くと「O.O」が現れるのだ。単なる偶然だろうか。NiziU自身も事務所の先輩であるStray Kidsが20年に発表した楽曲「神メニュー」と「Back Door」のMVに出演している。ファンの間で楽しい推測が広がったが、最終的にはエキストラだったことが判明している。

 4月1日のエープリルフールには、公式サイトで新曲「OSOBA」(おそば)をリリースすると“いたずら”発表。これは21年11月24日にリリースされたNiziUの初アルバム「U」のリード曲「Chopstick」(=箸)にかけているのは言うまでもない。「OSOBA」とは「ASOBO」のアナグラム(文字を入れ替えて別の意味を作る遊び)であり、遊び心をくすぐる巧みな仕掛けだった。一見子どもっぽい印象も与える「ASOBO」のMVだが、その映像の中には世界に向けて「他者受容や包摂の精神を大切にしよう」と呼びかける強いメッセージが込められているのだ。

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