RIZINデビュー目前の貴賢神、力士時代のツラすぎる日々を激白「あれで強くなれた」
相撲と格闘技の違い「格闘技は練習していても楽しい」
――それは強くなりますね。でも現代っ子はすぐに辞めちゃうでしょう?
「自分の同期生は、ひと月もしないで逃げましたね。自分の1年下の子も、入って3日で逃げました。夜逃げです。あ、またいなくなったって感じですけどね。番付が上でも、まだ一番若かったから、雑用もやらされたんです。だから『このクソ野郎! 絶対に負けない。絶対にここから抜け出してやる』って思っていました。それを毎日繰り返していたので」
――賛否はあると思いますけど、強くなりたければ、そのくらいの理不尽は覚悟しないと強くはなれないと思います。
「そうでしょうね。いまの時代は生きにくいです。自分、たまたまマスクをしないで近くのポストに郵便物を入れに行っただけで写真を撮られて、相撲協会から電話があって怒られましたもん。そんな毎日なので、ホントに嫌になります」
――コンプライアンス(法令遵守)に厳しいですよね。
「イジメるために殴るのと、強くするためのムチって違うじゃないですか。でも、それをやっただけでパワハラになってしまう。それだとこれから強いお相撲さんは生まれなくなってしまうと思います。自分は今でもあれがあったから強くなれたと思っているんですけどね」
――ちなみに相撲とMMAの違いはなんだと思いますか?
「まず水分が取れるじゃないですか(笑)。そこが違うし、格闘技の方が楽しいです」
――楽しい?
「相撲はツラい、キツい、いろんな感情が交差する場面が多いです。イメージ的には『修行』なので。もちろん人生を通したら一生修行なんですけど、とくに相撲はより『修行』っていう色が強い。だから『修行』だって思っていたし、耐える場面が多いので、そのなかで楽しさを見出すのは難しいんです。相撲の稽古は心拍数が上がって、息ができなくなったら、何も考えずにただ稽古をするだけです。機械的にやることだけを考える」
――人間的な感情を消し去ると。
「ええ。やりきる、やりきる、やりきる。言われたことをやりきる。考えるのはそれだけ。ツラくなればなるほど、無になって、自分の中に入り込んで、ツラいっていう感情をなくすんです。(稽古の)繰り返しを、自分のなかで染み込ませて、そこに順応していく。だから環境に応じやすいんです、自分の場合は」
――格闘技で強くなるのとは違うんですね。
「全然違います。格闘技は練習していても楽しいですよ。相撲は稽古していて、楽しいと思うことはないので。強くならなくちゃ、しかないので。その違いがありますね」