祖父の死で見つめ直した家族の絆 28歳・瀬戸かほの迷いを消した映画監督からの言葉

頭に浮かんだ“一緒に暮らした祖父と家族”
悩みを内に閉じ込めていた17年に、越川道夫監督のワークショップに参加。出会いから2年後に臨んだ映画「愛の小さな歴史 誰でもない恋人たちの風景 vol.1」は、体当たりで駆け抜けた作品。撮影後、越川監督から「芝居を続けていくべきだ」と声を掛けられ、女優を続けていこうと決めた。「あの時いただいた言葉は今も支えになっている」と感謝している。
「クレマチスの窓辺」では、亡くなった祖母に思いを寄せていく絵里を演じた。頭に浮かべたのは、一緒に暮らした祖父と家族のことだった。
「私の(父方の)祖父は山形に住んでいました。幼い頃は家族で年に1度は会いに行っていましたが、私や妹たちが成長していくにつれてだんだん予定が合わなくなり、祖父と会う頻度が低くなっていきました。私が実家を出た頃、両親は一人で暮らす祖父を心配して横浜の実家に呼び、祖父は晩年、横浜で暮らしました。私にとっての初めての身近な死は、祖父でした。今でもたまに祖父のことを家族で話すのですが、会話の中で祖父はいつまでも祖父として存在し続けていています。
祖父のことでも、絵里の祖母のことでも、亡くなった人が生きている人に残していくものは大きいと感じました。そして、祖父は、父親が(祖父の)子どもだったということを教えてくれた存在でもありました。父は幼い頃、祖父の仕事が忙しくあまり遊んでもらえなかったようで、その分、私や妹たち、母とは思い出をたくさん作ろうと、旅行や食事の機会を作ってくれました。私の出演作品を見た父や母が喜んでくれたときは、幸せだなと思います。共に過ごすことができる時間を大切に過ごしたいと思っています」
不安や迷いもあったが、作品で家族を喜ばせている。そのことをかみしめながら、瀬戸は演じ続けていく。
□瀬戸かほ(せと・かほ)1993年11月11日、横浜市生まれ。2014年からモデル活動を始め、15年に映画「orange-オレンジ-」でスクリーンデビュー。映画、舞台、ウェブドラマなど、幅広く活動。19年公開の映画「リビングの女王」では、第6回賢島映画祭で助演女優賞を受賞。趣味は刺しゅう刺繍フラワーアレンジメント。特技はピアノとベース。168センチ、血液型O。
ヘアメイク:ふじわらみほこ
