兄は五輪メダリスト、俳優・原沢侑高「僕はスターではない」 “ポジション探し”に奮闘中

兄が五輪メダリスト――。ともすれば萎縮してしまいそうな環境の中、自分だけの居場所を求めて暗中模索している俳優がいる。浅井企画に籍を置き活動する原沢侑高(ゆたか)だ。原沢は山口県下関市出身。188センチの恵まれた体格と精悍(せいかん)な顔立ちに、愛嬌のある笑顔がチャーミングな注目株だ。リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した柔道の日本代表選手・原沢久喜を兄に持つ彼は、「もっと目立ちたい」という理由で俳優を志した。

原沢侑高
原沢侑高

映画「今はちょっと、ついてないだけ」で玉山鉄二演じる主人公の青年期を好演

 兄が五輪メダリスト――。ともすれば萎縮してしまいそうな環境の中、自分だけの居場所を求めて暗中模索している俳優がいる。浅井企画に籍を置き活動する原沢侑高(ゆたか)だ。原沢は山口県下関市出身。188センチの恵まれた体格と精悍(せいかん)な顔立ちに、愛嬌のある笑顔がチャーミングな注目株だ。リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した柔道の日本代表選手・原沢久喜を兄に持つ彼は、「もっと目立ちたい」という理由で俳優を志した。(取材・文=安藤かなみ)

 上京するきっかけは、焼き肉屋でアルバイトをしていた高校時代にさかのぼる。「お客さんとして、たまたま小林健二監督が来ていて。『お前、夢あるのか』と聞かれたので、『俳優になりたいです!』と答えたんです」。

 小林氏に「俺、映画監督だから。東京来たら連絡しろ」と言われた原沢は上京を決意するが、女手一つで原沢を育てた母親は猛反対。「自分が1人で3兄妹を育てた分、子どもたちにはちゃんと就職して安定してほしかったんだと思います」。原沢は時給660円のアルバイトで必死に100万円を貯金。「俺の覚悟」と話し、心配する母親を説得した。

 上京してからは小林氏を頼り、俳優としての基礎を学ぶことを勧められて1年後に六本木・俳優座研究所に入所。しかし、所属事務所が決定するまでは苦難の道のりだった。

「履歴書を持っていろんな事務所を回っていましたが、いつも門前払いで。30社くらいダメだったころから『俺はダメなのか?』とだんだん思うようになってきて……。自分の写真は小さくなって、『兄はオリンピック選手』という一文が、徐々にでかくなってくるんです(笑)」

 そんな中、浅井企画の担当者の目に留まり所属が決定。ついに本格的にデビューを果たした。4月8日に公開される映画「今はちょっと、ついてないだけ」(柴山健次監督)では、玉山鉄二演じる主人公・立花の青年期という重要な役どころで出演。信州の美しい大自然に包まれて行われた撮影では、そのみずみずしい演技で存在感を放っている。

 撮影では、柴山監督から「原沢くんはある意味主演だから、その気持ちでやってね」と声をかけられたと言う。「僕が演じている若いころの立花はスターカメラマン。だけど、実際は何も分からないまま持ち上げられて、演出されたスターだったんです。僕はスターではないし、現場では監督を始め、演者さんもクルーの皆さんも僕を持ち上げてくれて、すごく役に入りやすかったですし、いい環境で芝居ができました」。

 25歳の原沢にとって、玉山はスターだ。幼少期は「百獣戦隊ガオレンジャー」(テレビ朝日系、2001年-02年)で玉山演じるガオシルバーに釘付けだった。その後も、映画「手紙」などで憧れを抱いてきた玉山との共演に「ミーハーな部分ももちろんあるんですけど……」とはにかみ、「面白いことに、『お芝居する』となった途端にミーハーな感情がなくなるんですよ。気取っているようで、キザな言い方になりますけど」とさらに照れ笑いを浮かべる。

「でも、家に帰ってから『俺、あの人と芝居できたんだ』『隣にいて、話しかけたりしたんだ』と思うことはあります。現場では、常に「どうしよう」「こうしよう」で頭がいっぱい。必死で何も考えられないんです。みんなの前では澄ましたり、『大丈夫』なんて言いますけど……」。そう話す表情は、少しだけ背伸びをしてしまう素朴な少年のままだ。

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