元「AKB48」のメンバーでかつては表題曲のセンターポジションも経験した内田眞由美（28）。現在は焼肉店経営者としての道を歩み、飲食店「焼肉IWA」は4月でオープン8周年を迎える。現役アイドルをしながらの“副業”という異例の挑戦に踏み切った内田にこれまでの歩みを振り返ってもらった。（取材・文＝竹之内梨佐）

　内田は2007年に「AKB48 第二回研究生（5期生）オーディション」に合格し、AKB48としての活動をスタート。10年には「AKB48 19thシングル選抜じゃんけん大会」で優勝し、見事にセンターの座を獲得した。さらに、14年には現役アイドルでありながら、約5000万円の借金を背負い、自身がオーナーを務める飲食店「焼肉IWA」をオープンさせた。

　これまでの人生について内田は、「12年も前のことになるんですけど、わたしの人生をトータルで考えたときに、『じゃんけん大会』で優勝したときがターニングポイントでした」と振り返る。

「いろんなことに挑戦しようと思ったきっかけ」となった“じゃんけん大会初代女王”の座に輝いてから、約4年後の20歳で起業を決意。「幼い頃からフワッとお店を開きたいという気持ちはありました」と、焼肉店を経営していた両親の影響が大きいと明かす。

　19歳の頃、事務所の社長との面談もきっかけの一つだった。「漠然としたまま『わたしお店を開きたいんです』と言ったら、社長から『両親も焼肉屋さんしている。両親のサポートもあるし、焼肉屋さんをしてみたら？』って言われて、始めちゃいました。AKB48初の副業です」と笑う。

　4月にはオープン8周年。「あっという間ですね。ものすごく成長させられました」としみじみだ。「始めたころは、現役のアイドルだったので、『うっちーがやっているお店！』ってだけで、稼働してなくてもお客さんが来てくれていたけど、卒業してお客さんがガクンと減ることもありましたね」。

　ここ数年は新型コロナウイルスの影響も大きかった。「1番の打撃でしたね」と吐露しながらも、感謝の思いを口にした。「コロナでお客さんが減っていく中でも、助けてくれる方も結構多くて。足を運べないファンの方もネットショッピングのお肉を買ってくれたり、クラウドファンディングに協力してくれたり、アイドルだったからこそ、今支えられていますね。（コロナ禍で）とても感謝する機会になりました」。

　しかし、起業人生には苦労ばかりがつきものではない。「うちのお店で働きたいとか、店を求めて働きに来てくれたり、お客さんも『焼肉IWA』のアットホームさや温かさが好きと言ってくれます。憩いの場になってくれていて、すごくうれしいです。お店をやっていてよかったことのほうが多いですね」と笑顔を見せる。

「焼肉IWA」では、現役アイドルがアルバイトをしている光景も真新しい。自身が店に立つようになり、友人とお店に立ちたいと考えたことがきっかけだった。「友達のほとんどがAKBグループの子たち。ただ、友達数人にバイトとして声をかけただけで『元AKBがアルバイトしてる』ってザワザワしちゃって（笑）。元AKB48の野中美郷ちゃんから始まって、その子たちが出勤しますってなるとファンの人たちが来てくれてにぎわったりしました。（お客さんが来店するのには）こんな方法もあるのか、とあとから気付かされました」。

　経営者としての彼女の人生は始まったばかり。これからもさまざまな発想力で焼肉業界を盛り上げてくれるであろう。

□内田眞由美（うちだ・まゆみ）1993年12月27日、東京都出身。2007年「AKB48 第二回研究生（5期生）オーディション」に合格。09年にチームKメンバーに昇格。10年「AKB48 19thシングル選抜じゃんけん大会」にて16人の選抜メンバーを決めるイベントで優勝し、楽曲「チャンスの順番」で初センター。14年20歳で飲食店「焼肉IWA」を新大久保にオープン。22年4月にオープン8年を迎える。同年には自身がプロデュースを手掛けるアイドルグループ「YORISOERU」の結成を発表。5月25日にデビュー曲「恋はオックスフォド―ブルー」を発売する。