プロゲーマー兼YouTuber・あぐのむ「アンチコメントは大歓迎」 視聴者に“寄り添う”姿勢の理由
視聴者のコメントは「結果が付いてこない時期でも前を向かせてくれる」
視聴者との関係性については、いわゆる“アンチ”コメントとの付き合い方も独特だ。一般的には無視やBAN(追放)などが対応策とされるが、あえて軽い口調でコメントを拾い、場合によっては「また来てくれ」と語りかけることもある。
「ミスをしたら『へたくそ』というコメントが日常的に来ますが(笑)、何も思わないです。荒れたとしても、どのようにBANせず対応するかを考えています。BANしてしまうと、先細りにつながってしまうと感じるんですよね。YouTubeは開けたコンテンツではありますが、来てくれる方は大事にしたいし、たとえネガティブな形でも興味を持ってくれている方であれば、そこから広がりがあるかもしれない。だから極力、BANはしていません。
アンチコメントをするのは、その人の気分次第なところもある。そのとき生活がうまくいっていないから、(憂さ晴らしに)アンチコメントをする、という側面もある。見にきているということは興味は持ってくれているので、その人の生活が安定したら、(アンチコメントをせずに)普通に見てくれるようになるかもしれませんから」
発展途上のeスポーツの世界でプロ選手として活動するからこそ、“先細り”につながるような行動をせず、どんな形でもファンになる可能性は摘まない。
「『プロってなんだよ』『ちょっと1回見てみるか』と、冷やかし半分で来る人もいると思います。そんな人たちを、最初の段階で排除してしまわないようにしたいですよね。もし『プロがミスとか(笑)』とコメントをしていたとしても、裏を返せばそれほど興味があるということ。そこからまた2~3回と見ているうちに面白いプレイに出会って、『この人はうまい、ファンになろう』と変わっていけばプロリーグとしてプラスになります。そういう意味も込めて、『アンチコメントは大歓迎』というスタンスでやっています」
プロリーグの未来を考え、視聴者にも寄り添うスタンスのあぐのむ。周囲に多くのものを与えながら活動しているが、もちろん“与えられる”こともある。YouTube活動で報われた瞬間を、次のように紹介してくれた。
「プロゲーマーは結果を出していないとメンタル的にキツい職業ですし、どうしても勝てない時期というのはあります。そんなときに、ふと『自分には価値がないのかな』と思ってしまうこともあります。でも、YouTubeで活動していたおかげで、負けても励ましのコメントをもらえたり、前向きにしてくれるコメントに救われたりしました。結果が付いてこない時期でも前を向かせてくれる。そんなときは『やっていてよかったな』と思いますね」
視聴者と支え合いながら、厳しいプロの世界で戦い続ける。幸せな関係が成立するからこそ、あぐのむはプロゲーマーとYouTuberの“二足のわらじ”を続けていけるのだろう。
□あぐのむ/1994年11月25日生まれ、新潟県出身。キャプテンとしてF・マリノスを引っ張る“トリコロールの貴公子”。「RAGE Shadowverse Wonderland Dreams」ファイナリスト、「JCG Shadowverse Open」優勝1回。