首都圏新築マンション購入事情 価格高騰もパワーカップル、シングル女性に需要のワケ
シングル女性は2020年の「8.6%」から「11.1%」に増加で過去最高値
そして、もう1つの属性。調査では「20年よりシングル世帯がやや増加し18%に。調査開始以来、最も高くなった」とのデータが示された。21年の全体を見ると、シングルの男性は「6.9%」で女性は「11.1%」。女性は20年の「8.6%」から増加しており、過去最高値に達している。
単身者がマンションを買いに走る理由。柿崎氏は「将来不安が背景にあると思います。老後もずっと家賃を払い続けるのは、負担感がありますよね。賃貸ではなく購入を選ぶのもそのためです。ずっと賃貸の家賃と、購入した場合の住宅ローンの返済額が同じなら、『購入すれば資産になるので、買った方が得だよね』と考えるわけです。現在は超低金利でローンの返済負担が軽く済むので、無理なくプランが組めるなら買ってしまおうと踏み切る方が増えているのだと思います」と指摘する。
こうした中で、シングル女性は「ディベロッパーのもう1つのターゲット」という。「女性の場合は、セキュリティー面でも安心できる住環境を求める方が多いんです。昨今の分譲マンションは何重にもセキュリティーゲートが設けられ、高い安全性を備えています。共有設備を含めて、シングル女性に向けた設計・開発が進んでいます」と語った。
マンション値段の高騰化は悩ましいところ。全体の平均購入価格は「5709万円」だが、実は「6000万円以上」は約36%にも上る。とりわけ、東京23区内は驚くべき数字。01年の「4253万円」から最新21年は約1.6倍となる「6793万円」まで上昇している。ただ、地域差はあり、21年の埼玉県は「4819万円」で、千葉県は「4361万円」だ。柿崎氏は「平均価格をみると高く見えますが、これは東京23区の物件シェアが増えていることが要因の1つです。冷静に首都圏全体で見比べれば、値ごろな価格のエリアもありますよ」と話す。
ローン借入総額を見ると、「平均4941万円」で05年以降では最も高い数字だ。低金利政策の恩恵を受け、住宅ローンの借りやすさも深く関係している現状のマンション購買意欲。今後の市場についてどう見るか。柿崎氏は「今年~来年という短期的な見通しとしては、価格が大きく下がることは考えにくいです。むしろ、都心部などはまだ緩やかに価格が上がっていく気配があります。ただ、日銀の黒田東彦総裁が来年4月で任期満了を迎えます。後任の総裁がいまの『異次元緩和』『低金利』をどうするかは注目です」としている。
□柿崎隆(かきざき・たかし)1996年、(株)リクルート入社。その後、「ダ・ヴィンチ」編集部、「R25」編集長(本誌・WEB)などを経て、2017年4月から「SUUMO新築マンション」編集長。