首都圏新築マンション購入事情 価格高騰もパワーカップル、シングル女性に需要のワケ
首都圏の新築マンションを買っているのは、どんな人たちなのか。調査で浮かび上がった意欲旺盛な「属性」は、「世帯年収1000万円以上の共働きのパワーカップル」と「シングル女性」だった。価格上昇が止まらない新築マンション市場を巡る最新事情と購入実態について、リクルート「SUUMO新築マンション」編集長を務める柿崎隆氏に解説してもらった。
専門家に聞いた 総年収1000万円以上の既婚共働き世帯は「全体の27%」、平均購入価格は最高値「5709万円」
首都圏の新築マンションを買っているのは、どんな人たちなのか。調査で浮かび上がった意欲旺盛な「属性」は、「世帯年収1000万円以上の共働きのパワーカップル」と「シングル女性」だった。価格上昇が止まらない新築マンション市場を巡る最新事情と購入実態について、リクルート「SUUMO新築マンション」編集長を務める柿崎隆氏に解説してもらった。(取材・文=吉原知也)
2021年1月~12月の首都圏での新築分譲マンション購入契約者を対象とし、計7289件の集計結果を分析したリクルートSUUMOリサーチセンターによる「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」(3月15日に公表)。属性の観点から読み解くと、近年の日本のライフスタイル・労働環境に連動していると言える結果が見えてきた。
主なデータは、世帯主の平均年齢は「38.8歳」で、20年よりやや上昇した。既婚世帯の共働き比率は、「01年調査開始以来最高の74%」をマーク。年収面を見ると、世帯総年収は「全体平均で1019万円、08年以降で最も高い数値」に。総年収1000万円以上の既婚共働き世帯は「全体の27%」。注目の平均購入価格は、調査開始以来最も高い「5709万円」となった。
総合勘案すると、“世帯年収1000万円以上の共働き夫婦”いわゆる「パワーカップル」が、高価格の新築マンションをどんどん買っている構図が見える。柿崎氏は「パワーカップルが、市場のメインターゲット」と語る。
背景の1つには、共働きが当たり前になった社会情勢が。同調査では、既婚世帯における共働き比率は、01年が「41.5%」で11年が「54.6%」、そして21年が「74.3%」。10年ごとのデータで一目瞭然だ。柿崎氏は「(マンション購入層の)共働き率の増加は、日本の共働き率の増加と連動しています。加えて、一般的に、結婚や子どもができるタイミングで家を買う人が多い中で、首都圏の初婚年齢は12年から21年を比べると約1.5歳上がっています。購入世帯主の平均年齢が上昇傾向にあるのは、こうした背景もあると考えられます」と話す。
一方で、「共働きでないと新築マンションは買えない」といった羨望の声も出てくるだろう。柿崎氏も「東京を中心に新築マンション価格は上がり続けており、一定以上の収入や資産がないと手を出しにくい実情があることは確かです」という。
ただ、「鶏と卵の議論の部分もあって、価格上昇の背景には、増え続ける共働き世帯のニーズに応える物件をディベロッパーが供給してきたから、という面もあります」と説明する。売り手側であるディベロッパーは「メインターゲットである共働き世帯に向け、立地や利便性に優れ、質の高い設備・サービスを備えた物件の開発に注力してきたからです」。例えば、「駅近立地で、買い物や子育て環境がよく、豊富な共用施設を備えた大規模物件。とりわけタワーマンションが代表例でしょう」。こうした物件は「(条件が良い分)必然的に価格が高くなっていきます」と指摘する。
加えて、今回の調査結果からは「リモートワークの増加により、在宅環境を意識した“居住空間のゆとり”を求める傾向も見受けられます」とのことだ。