義務教育は「音楽に触れる最初の機会」 “合唱自粛”要請が音楽教育にもたらす影響
コロナを機に合唱を遠ざけてしまう先生や、少しでも行事を減らしたい管理職の本音も
「教育音楽」の主な読者層は現役で教壇に立つ教員だ。今、音楽科の先生たちはどのような悩みや難しさを抱えているのか。
「先生によって人それぞれですね。音楽鑑賞、器楽やボディーパーカッション、タブレットを活用しての簡単な創作など、歌以外の学習を工夫して音楽の楽しさを伝えている先生もいれば、そもそも一人一人のモチベーションに差があって難しい歌唱指導を、コロナを機に遠ざけてしまっている先生も……。もちろん、活動の方法を工夫して歌の楽しさを伝え続けている先生もたくさんいますが。また、授業だけでなく『行事で歌う』という慣習を存続させるのも難しい状況です。今は教員も忙しく、管理職としては減らせる仕事は少しでも減らしたいという本音も。一度やめてしまった慣習をもう一度やろうとはなかなか言い出しづらいのが実情ではないでしょうか」
音楽教育の現場で、あちこちに暗い影を落としているコロナ禍。逆に、コロナ禍が音楽教育にプラスに働いている部分はないのだろうか。
「コロナ禍でということはないですが、学校教育全体が一方的に知識や解法を伝達する詰め込み型の教育から、子どもたちに自ら考えさせる、自ら未来を切り開いていく主体性を育むことを重視した教育に変わってきています。そんななかでのコロナは、子どもたちに『どうすれば合唱ができるのか』『そもそも人はなぜ歌うのか』を考えさせる、またとない教材になるのでは。だからこそ、行政からの一方的な自粛要請は疑問です。『できない、やるな』ではなく、どうすればできるのかを模索するのが教育的なアプローチではないでしょうか」