荻野目洋子独白 諦めかけた歌手活動…再び歌うきっかけを与えてくれた夫のひと言
「堅苦しく考えなくても良いんだよ」
実は今こうやって歌手活動を再開できた大きなきっかけは主人だったんです。これまで私は歌のお仕事に対してものすごく身構えていました。コンサートとかやるなら、絶対にここまでのレベルに達していないとだめだとか、常にこのぐらい走らないとダメだとか。ずっと自分にプレッシャーを与え続けて追い込んでしまうタイプだったんです。それが原因で疲れすぎて、大変だったことがいっぱいありました。
主人と結婚して娘が生まれて、今度は家庭をしっかり守って行かないといけないですし、もし歌の仕事を再開してしまったらまた自分を追い込んでしまいそうで両立は難しいと思っていました。すると主人が「せっかくここまで音楽をやってきたんだから歌ったほうがいいよ」って背中を押してくれたんです。でもやっぱり不安で、できない。そう思っていたら主人は「仕事のことも家のことも今までみたいに気を張り過ぎないで自然体で受け入れてみたらどう?」と。
彼はアスリートとして人一倍メンタルのケアをしてきてトップの選手たちとも交流が深く、世界を転々としていると同業者以外の人たちと交流する機会もたくさんあったそうです。だからいつも主人から「堅苦しく考えなくても良いんだよ」ってそんな話をたくさん聞かせてくれたんです。
驚いたのは「ホール・アンド・オーツ」のジョン・オーツさんと一緒にテニスを楽しんだり、ギタリストのエディー・ヴァン・ヘイレンさんから直接ギターをいただいたり、ウインブルドンの試合中に雨で中断した時、観客席にいたエルトン・ジョンさんが即興で「雨に唄えば」を歌ってくれた話など。主人の師匠だったビタス・ゲルライテスさんはレストランでいつも知らない人と気さくに会話をされていたそうです。
ちょっとスケールが大きな話ですが、どんなに一流になっても人としての素晴らしさは変わらないということを主人から教えてもらって、私と出会ったときもそうだったと言ってくれて……。そんな話を聞いているうちに、私自身も仕事に対して決め付けていたものを少しずつ外していって、ようやく自然体で臨めるようになってきました。今はというと、さっきまでお弁当を作っていた私がそのままのテンションで「じゃあ行ってくるよ!」と言って歌の現場に出かけています。私の中でのオンとオフのスイッチはなくって常に自然体でいけるようになりました。これからもそうありたいと思っています。