T-BOLAN森友嵐士の“困難を乗り越えるヒント”「結果ばかりの時代に逆行したっていい」
物事の捉え方を1つ変えてみるだけで大きく変わる
――とても感動的な出来事でした。
「足りないものや失ったものがあると絶望感に襲われるけれど、もう1回目標にたどり着く権利をもらったんだと。その権利というのは自分自身でたどり着かないと感じられない大きな喜びと、いろんなドラマを手に入れる権利です。そういう経験をこれまでの自分の人生だったり、仲間たちから学びました。だから今の俺の物事に対するポジティブな受け止め方っていうのは、1つの解釈なんです」
――1つの解釈とは具体的に?
「俺が歌を取り戻せたのもある意味その解釈の仕方で。初めは過去の自分に負けていると思って一歩も足を踏み出すことができなかったんです。『強くないよ』って言ったじゃないですか? でも『俺はただ歌えなくなっちゃっただけで、決して過去の自分には負けてはいない』そう確信できた。だけど、どうしても過去の自分に引きずられてしまうから『T-BOLAN』を1回封印しよう、リセットしようと思ったんです。
そしてリハビリの課題曲を『上を向いて歩こう』に変えてみたら、少しずつ前に進み始めたんです。やっぱり思考って大事なんだなってあらためて気が付きました。すると自分の歩き方や生き方、考え方といった変化のスピードがどんどん上がってきて、やっと心にゆとりが出てきた。今度は、周りが手を差し伸べてくれている優しさにもようやく気が付いて、自然に『ありがとう』という言葉が生まれてきました。心がポカポカしてくる。それで元気になってきたんですよ」
――長い時間をかけた山登りだったんですね。
「俺だけじゃなくて、みんないろいろと抱えながら生きているはずです。周りにそんなヒントがあったり気付ける場所がいっぱいあるから。1人じゃないって。いろんな人の声や顔やぬくもりを感じていたら、きっと未来の自分にいい気付きが絶対に生まれるはずです。
どんな困難があっても、失うものがあったとしても、長ければ長いほどたどり着いたときに大きな喜びが待っているだろうし、長ければ長いほどドラマも大きい。どうしても今は早く高くと結果を求められる時代になってしまったけれど、逆の考え方も尊いし、気持ちも豊かになることだってあるんですよ」