大学新学期で対面授業徐々に再開 教員悩ます学生の“私語”「東大は別次元の静かさ」
東大では大人数教室でも静かな授業「自立訓練や自己管理ができている」
4月に始まる前期タームの講義の第1回は、シラバスと呼ばれる授業計画の概要や授業の進行について説明するガイダンスがほとんどで、本来なら90分間の授業を半分ほどで終えてしまう教員が多い。その際、教員は「私語厳禁」であることを学生たちに強く訴える。中には「うるさい学生は退室させる」と言い放つ場合もある。それでも私語の根絶は難しいという。「教員にも問題があります。学生が身を乗り出したくなるような面白い授業をしてくれる教員は多くありませんし、教壇の椅子に座りっぱなしで学生の私語について聞こえないふりをしている教員もいます。早稲田で授業を受け持った教員は私語を減らすため授業中に学生たちの席まで歩いていって全員と直接対話するという工夫をしていました」(別の大学教員)。
一方、東大の授業について聞いてみると意外な事実が判明した。複数の大学で授業を受け持った講師はこう明かす。「東大の授業で私語を繰り返す学生はほとんど見たことがないですね。大人数教室の文学系の講義でも多くの学生たちが前方の列に座っていますし、みな静かにノートをとっています。後方の席に座っている学生の中には、ノートパソコンを開いて何かを読みふけっている者もいます。内職であることは一目瞭然ですが、ゼミ発表や卒論の準備をしているのでしょう。ですから大人数教室でも授業中は別次元の静かさです。東大生は勉強に対する自立訓練や自己管理ができているようで、受講態度はとても良好です」。
多くの東大生が小学生時代は有名進学塾のSAPIX、中学・高校時代は東大受験指導専門塾の鉄緑会で受験勉強に取り組んできた。「東大のいいところを一つ挙げるとすると、学生の私語がほとんどないので授業がやりやすい」(同)。コロナ禍を受け本郷キャンパスの安田講堂地下にある中央食堂(学食)の座席には「お食事中の会話は『禁止』です」の表示があり、ほとんどの学生はこれを守って黙食している。
「私語厳禁」。4月から大学に進学する新入生にはぜひ覚えておいてもらいたい言葉だ。