「なぜ合唱だけが」 卒業式で自粛も…コロナ禍3年目、岐路に立つ合唱文化の今
大学では新入生の勧誘ができず、ノウハウ引継ぎが途絶え存続できないケースも
さまざまな工夫を重ね、ようやく形を変えて合唱が行えるようになってきた矢先、オミクロン株が流行。1月には国の要請を受けガイドラインの改訂を行ったが、直後の2月、文科省が「感染リスクの高い教育活動」として全国の教育委員会に自粛を要請した。その後の意見交換で「より感染リスクを低減し実施している活動について、一律に控えることを求めるものではありません」との共通見解が示されたが、卒業式シーズンを前に、それまで練習に取り組んできた合唱を取りやめる学校も相次いでいる。
「連盟のガイドラインは前後2メートル、左右1メートルですが、文科省では前後左右2メートルの間隔を取るなど、一層基準が厳しいんです。学校という場の特性上、条件が厳しくなるのも分かるし、私の立場からしても、合唱にリスクがまったくないとは思いません。ただ、運動部の円陣や大声での声かけを見ると、なぜ合唱だけという思いはある。リスクは多少高くとも、それを補って余りあるだけの対策はしています。特に合唱だけが名指しで言われる覚えはありません」
合唱文化喪失への危機感もないわけではない。
「小学校から成人の部までどこも減っているのが実情ですが、特に危機的なのが大学合唱団。小中高のクラブや部活動では顧問がおり、何らかの活動ができたり、一時的に機会が減ってもまた次の代が入ってきますが、大学は学生が主体なので活動を禁止されると身動きが取れない。新入生の勧誘が丸2年間できておらず、技術指導や運営ノウハウの引継ぎが途絶え、歴史ある団体でも存続できないケースが多発しています。いずれは社会人合唱団への供給も途絶え、さらなる合唱人口の縮小も予想されます」
コロナ禍も3年目を迎え、柔軟に変化に対応する一方で、その継承に限界を迎えてもいる合唱文化。人々が再び気兼ねなく歌える日はいつになるのか。