「彼らは犯罪者」在日ウクライナ人の叫び ロシアの侵攻で思い出す「三度許すまじ原爆を」
「撃ち合いになるということを信じたくなかった」
旧ソ連からの独立を挟み、日本に来日する前の26歳までオデッサで暮らしてきた。「育った地域はロシア語系の地域。第一母国語と言えば、ロシア語。小学校2年生から、第2母国語としてウクライナ語も習った。両方の文化も当然存在しています。私たちは信じたくなかったんです。ロシア人とウクライナ人の間で撃ち合いになるということを信じたくなかった」。現代にいたるまでの歴史、両国の距離が近いからこそ、心境は複雑だった。
日々、被害が拡大するばかりのウクライナの惨状をテレビで見て、ミグダリスキーさんはある日本の歌を思い出した。
「私は子どものときから広島、長崎の原爆に関していろいろ研究をしてきました。その中にさまざまな歌があった。『三度許すまじ原爆を』という歌詞が耳に残っています」
浅田石二作詞・木下航二作曲の「原爆を許すまじ」は1954年発表。同じ年の3月に第五福竜丸事件が起こった。世界唯一の被爆国を襲った悲劇に、日本国民が怒りに満ちていた。
改めて故郷ウクライナに思いを重ねた。罪のない国民が殺りくの恐怖の中で祖国を死守するために懸命に闘っている。
「許せるわけない。私はロシア人の友だちが山ほどいます。ロシア語も教えている。ロシアとの関係は当たり前のような関係だったけれども、プーチン政権の周りにいる人、それと今でもプーチンの行動を応援しているロシア人は嫌いです。嫌いというよりも地獄に堕ちなさい。プーチンとかプーチン政権は断じて許せん。彼らは犯罪者です」。ミグダリスキーさんは言った。
□ウラディーミル・ミグダリスキー 1972年6月12日、ウクライナ・オデッサ生まれ。オデッサ国立大学卒業後、98年に来日。京都大学大学院卒業。京都情報大学院大学准教授(数学)。同志社大学、関西大学非常勤講師。2019年10月のゼレンスキー大統領来日の際には通訳を務める。少林寺拳法准範士六段、居合2段。