日本在住のウクライナ女性「本当に、やばい。本当に、戦争」 キエフに残る家族案じる

ロシアとウクライナの緊迫した状態が続き、日本に在住するウクライナ人は日々、心配を募らせている。2日、東京都内で取材に応じた30代の女性は、両親と妹を首都キエフに残し、日々連絡を取り合っている。ロシアの攻撃が激しさを増し、キエフへの包囲網が狭まる中で、不安の胸中を明かした。

平和を願う花が置かれた在日ウクライナ大使館【写真:ENCOUNT編集部】
平和を願う花が置かれた在日ウクライナ大使館【写真:ENCOUNT編集部】

「父はウクライナから出たくない。おばあちゃんがいるから」

 ロシアとウクライナの緊迫した状態が続き、日本に在住するウクライナ人は日々、心配を募らせている。2日、東京都内で取材に応じた30代の女性は、両親と妹を首都キエフに残し、日々連絡を取り合っている。ロシアの攻撃が激しさを増し、キエフへの包囲網が狭まる中で、不安の胸中を明かした。(取材・文=水沼一夫)

 日本に住んで12年の女性は「家族はまだキエフにいます。昨日はちょっと危なくて、ママに(西部の)リビウまで行ってほしかったんですけど、怖くて外に出れなかったんです。心配ですね」と、落ち着かない表情で話した。

 家族が住む場所はキエフの中心部からやや外れた場所にある。シェルターではなく、自宅で身を潜めているが、外出は一切できず、「頑張っていろんなものを置いて自分たちを隠している」状態という。

 希望は戦下にありながらも連絡が取れることだ。ウクライナ国内でWi-Fiは飛んでおり、通信網までは遮断されていない。

 しかし、ロシア軍が刻一刻と近づく中で、どうキエフから脱出すればいいのか、大きな悩みとなっている。

「ママとケンカまではいかないけど、早く出て!早く出て!って言ったけど、やっぱり怖くて出たくないって」。娘の気持ちを受け止めながらも、勝るのは砲弾に巻き込まれるかもしれないという恐怖心。置かれた現実に気持ちは揺れ動いている。

 家族内でも意見が割れているという。「父はウクライナから出たくない。おばあちゃんがいるから」。ロシアが侵攻してすぐ、祖母の家の近くで爆発があった。「爆発の波で自転車が何回もシェイキング(バウンド)していた」というほどの威力だった。危険がすぐそばまで迫っていても、高齢の祖母を連れてどう避難すればいいのか。父の葛藤が伝わった。

 ただでさえ、移動にはリスクが伴う。キエフからリビウまでは電車で、「半日か1日ぐらいかな。結構長いです」と、かなりの時間がかかる。だが、その前に、自宅から最寄り駅までたどり着かなくてはならない。本来、地下鉄で30分ほどだが、「今メトロは走っていないからどうやって行くか」。車を使うと攻撃される可能性があり、安全を確保する必要があるが、ほかに移動手段は思いつかない。

 それでも今、最も心配なのは、長距離鉄道の運行が止まってしまうことだと女性は言う。

「リビウまでも人が多すぎて乗れないかもしれないけど、ただ走っているのはいいことです。ベラルーシとロシアの近くではもう走っていない。街からも出れないですし、中にいるしかない。キエフもそうなったら全然動けないから、それが私は一番怖い」

 自身が帰国する予定は今のところないという。日本ではSNSを使って現地のウクライナ人を支援している。ウクライナとポーランドの国境では、避難民が押し寄せ、大混乱となっている。友人、知人、困っている人の家族が安全に国境を越えられるように、アシストするのが役割だ。

「ポーランドの近くで電車に乗って動いているときに連絡が取れない人も多い。テレグラムというチャットがある。そこでみんなメッセージを書いて、“私の母がもしかしたらここに何時に到着するから誰かに会えませんか? 1人だから”とかシェアする。みんな、お互いに協力している。リビウからポーランドまですごい人が並んでいるし、住むところもないし、いろいろな人が個人的に手伝っている。そういうヘルプしかないです」

 願うのは一刻も早い“終戦”と、平穏な日々がもとに戻ることだ。

「状況がだんだん悪くなっているから明日はどうなるか分からない。本当に、やばい。本当に、戦争」。女性は必死の形相で訴えた。

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