卒業シーズン迎え子どもの制服どうする? リユース店代表「シングル家庭への支援必要」

卒業と進学シーズンを迎え、これまで子どもが使っていた制服やランドセルの処分に頭を悩ます親は多いだろう。しかし、制服やランドセルには思い出が詰まっていたり、まだ十分使える状態だったりして、そのまま捨ててしまうのはもったいない。最近では貧困世帯の増加や資源の再利用を促すSDGs(持続可能な開発目標)の意識が広がっているため、リユース店への持ち込みや寄贈が注目を集めている。実際にはどのような仕組みなのか。全国展開している学生服リユースショップ「さくらや」の文京店代表である石井真弓さんに聞いた。

「さくらや」文京店に集まった制服。メンテナンスを受けているから安心して着られる【写真:石井真弓さん提供】
「さくらや」文京店に集まった制服。メンテナンスを受けているから安心して着られる【写真:石井真弓さん提供】

「共助」の精神がさらに社会に浸透

 卒業と進学シーズンを迎え、これまで子どもが使っていた制服やランドセルの処分に頭を悩ます親は多いだろう。しかし、制服やランドセルには思い出が詰まっていたり、まだ十分使える状態だったりして、そのまま捨ててしまうのはもったいない。最近では貧困世帯の増加や資源の再利用を促すSDGs(持続可能な開発目標)の意識が広がっているため、リユース店への持ち込みや寄贈が注目を集めている。実際にはどのような仕組みなのか。全国展開している学生服リユースショップ「さくらや」の文京店代表である石井真弓さんに聞いた。(取材・文=鄭孝俊)

「公立や私立中高の制服は冬服で3万円ほど、体操着や通学カバンを含めると、一式8万円から10万円ほどかかります。小学生が背負うランドセルは4万円から高いものでは10万円以上かかります。子を持つ世帯にとって家計への負担は重い。そこで譲りたい側と必要とする側の間で情報共有できる方法を探っていました」

 こう語る石井さんは自らも中学生と高校生の子どもを持つ母親。子どもが着用する制服やカバンなどへの関心は普段から高かった。「さくらや」自体は2011年に創業者の馬場加奈子さんが香川県高松市内に第1号店をオープン。当初は50着ほどしか制服が集まらず苦労したが、2年目から軌道に乗り始め現在では全国に約90店舗を展開するほどになった。「さくらや」の事業を知った石井さんは「東京都文京区は多くの中学、高校が集まっておりニーズも高いはず」と考え、昨年秋にさくらやパートナーとして文京店のオープンにこぎつけた。ニーズに応えるためには、まだ多くの在庫が必要だという。

「さくらや」のリユースの流れはこうだ。まず、不要になった学校の制服、リボン、ネクタイ、体操着などを保護者が「さくらや」に持ち込む。店側はクリーニングやボタンのほつれの修理などメンテナンスをしたうえで購入希望者に商品の状態によって定価の1~3割ほどで販売している。通学目的以外の人に渡らないよう購入時には保護者や子どもに入学許可証や入学証明書、学生証などの提示を求めている。不審者については各店舗で情報を共有し絶えず警戒にあたっている。

 制服等を寄付したい場合は、文京店だと文京区民センター内にある地域連携ステーション「フミコム」の施設内やクリーニング店のサンレモン、ホワイト急便直営モンテシト店の店舗内に回収BOXがあり、開館(営業)時間内に持ち込めばスタッフが回収に出向く。事前連絡したうえで「さくらや」に直接持ち込むこともできる。文京店の近隣としては池袋店や江戸川店の取扱量が多くそれぞれ約2000点、約1000点の在庫を有するという。買い取りも行うが、「入学準備で大変なご家庭のために役立ててほしい」と買い取り代金を受け取らない保護者も多い。その場合は買い取り代金相当額を独立行政法人福祉医療機構の「子供の未来応援基金」に寄付することで子ども食堂の運営など貧困世帯支援につなげている。

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