元レスリング世界王者・中村倫也が激白 試合直前の「蜂窩織炎」を乗り越えたメンタル術

総合格闘技でのプロキャリアはわずか2戦ながら“大物感”を放つ選手がいる。「EXFIGHT/LDH martial arts」所属の26歳・中村倫也(なかむらりんや)だ。かつてレスリング選手として世界の頂点に立った経験も持つ26歳が、世界で闘いぬく“心”について明かした。

中村倫也は高谷裕之総監督(左)に全幅の信頼を置いている
中村倫也は高谷裕之総監督(左)に全幅の信頼を置いている

試合10日前に「蜂窩織炎」を発症していた

 総合格闘技でのプロキャリアはわずか2戦ながら“大物感”を放つ選手がいる。「EXFIGHT/LDH martial arts」所属の26歳・中村倫也(なかむらりんや)だ。かつてレスリング選手として世界の頂点に立った経験も持つ26歳が、世界で闘いぬく“心”について明かした。(取材・文=島田将斗)

 ホッとした表情を見せる。1月に行われた格闘技イベント「プロフェッショナル修斗2022 開幕戦」。中村は、25秒KOと圧倒した試合内容とは裏腹に、当日は「初めて100%自分を信じられない状況で試合に上がっていました」と振り返る。実は中村は試合10日前、左肘付近に「蜂窩織炎」(皮膚とその下の組織に細菌が感染し、炎症が起こる病気)を発症。40度の熱が出るなか、点滴を打ち調整をしていた。

「抗生物質を大量に取って寝込んでというのをやったら、本当に体が硬くなってしまって……。肺も広がらずでした」と明かす。一方で、コンディション不良だったからこその瞬殺になったと分析した。

「逆に集中力があった。どんなチャンスも逃せない状況だったので、逆にそれが試合開始直後のあのストレートになったのかなって思います。仮にコンディション良かったら自信にあふれすぎて、飛び膝がきたら避けていたかもしれないですね」

 本番10日前にふりかかった災難。コンディション不良のなかで試合出場を可能にしたのは独自のメンタルコントロール術だった。

「マインドの作り方が僕は得意。“見えないもの”の話にはなってしまうのですが、僕はそれも大事にしています」

 中村が話す“見えないもの”とは神頼みなどではない。レスリングで世界を制したことのある(2017年U-23世界選手権を優勝)アスリートだからこそ見つけた方法。それは「自分との対話」だ。

 中村は「自分を掘り下げて、良く知るということ。自分の心の動きの観察力と対話力」と説明する。

「今回の試合に例えると、野尻選手はめちゃくちゃ気合いが入っていると感じたんですよ。それを見て自分の気持ちが一瞬後ろに下がる。その心の動きを感じ取ってすぐに(前向きに)戻したりしていましたね。闘争心の大きさが大きければ大きいほど、落ち着かせる方の集中力も高くないとだめです」と試合での心の動きを振り返った。

 例えば練習の場面でも、「階段ダッシュでは、『あと何段だ』と先のことを考えてしまう。これだと“今”に心がないんです。未来を考えだしたら“今”に戻す。そういうところから作っていくんです」と熱弁した。

“未来”を考え、想像するイメージトレーニングなどとは異なり“今”という瞬間に中村は重きを置く。「心と体が一致していないとパフォーマンスは出ない。後のことも先のことも考えません」と語気を強めた。

 その上で、開幕戦10日前に発症した「蜂窩織炎」を「逆算して自分の“今”できることに集中した。動きたいのは分かるけど、休むというのは自分に言い聞かせる。ただ寝てるではなくて、回復に心を通わせるみたいな」と振り返った。

次のページへ (2/2) MMA転向にLDHを選んだワケ「強くなることに集中するだけでいい」
1 2
あなたの“気になる”を教えてください