「猪木の最後の弟子」藤田和之がノアマットを制圧 新たな王者像でノア革命に着手【連載vol.83】
「闘魂伝承最後の弟子」藤田和之がノアの至宝GHCヘビー級王座に君臨。無差別級のGHCナショナル王座も猪木の指導を受けた船木誠勝が保持しており、ノアマットが新日本プロレスOBに席巻される非常事態に陥った。
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「闘魂伝承最後の弟子」藤田和之がノアの至宝GHCヘビー級王座に君臨。無差別級のGHCナショナル王座も猪木の指導を受けた船木誠勝が保持しており、ノアマットが新日本プロレスOBに席巻される非常事態に陥った。
「俺のノアだ!」と高笑いを決め込む藤田のベルト戴冠は2・23名古屋決戦だった。「俺がノアだ」と意気込む中嶋に苦戦したもののゴツゴツ、ガツガツの武骨ファイトで攻め込んだ。エルボー、キックを叩き込み、監獄固め、足4の字固めで絞り上げる。スリーパーホールドでスタミナを奪い取り、パワーボム、顔面蹴り。ダメ押し念押しのパワーボムで仕留めた。
決戦前は「ちびっ子」などと中嶋を揶揄(やゆ)していたが「本気を味わった。本気の舞台で本気で戦うことは、幸せなこと」と、中嶋そしてノアマットを称えた。一夜明けた24日にはノアに入団したことを正式発表した。
ただ、会見中は「真人間になります」と神妙だったが、終了後には素に戻り野獣ぶりを発揮。いつものようにビールを飲み干すなど、これまでのノアのイメージを一新する行為を連発。良くも悪くも「ノア」の枠組みから飛び出す王者ぶりを披露した。
2019年9月からノアに参戦した藤田だが、藤田と言えば「猪木イズム最後の継承者」。アマレスの全日本王者から1996年に新日本でプロレスデビューし、2000年からはPRIDEなど総合格闘技でも活躍。プロレスと格闘技の二刀流で大暴れし、猪木イズムの優等生だった。
新日本ではIWGP王座、猪木の立ち上げたIGFでもチャンピオンとなっており、GHC王座が藤田コレクションに加わった。「俺のノア」との主張通り、王者が団体の顔となる。潮﨑豪、中嶋勝彦ら歴代の王者が「俺がノアだ」と主張してきたが、今や「ノア=藤田」の図式は誰にも否定できない。
もう一つのベルトも、船木の腰にある。船木も新日本育ち。UWFに移籍する際には、猪木が直々に説得に当たったこともいまだに語り草で、イケメンに鍛え上げられたボディー、何より「サムライ」を思わせる出で立ちで根強い人気を誇っている。
馬場・全日本プロレスの流れを汲み、三沢光晴が起こしたノアマットの2大ベルトが、猪木・新日本プロレスの教えを受け継いできた男たちの腰にある……。馬場・猪木の確執を知るファンにしてみれば、複雑な思いを禁じ得ないだろう。
しかも藤田は51歳、船木も52歳。いわばリビング・レジェンドといっていい。中嶋は33歳、船木がベルトを奪ったのは37歳の拳王だった。中嶋も拳王もアブラが乗った全盛期である。
今年還暦を迎える武藤敬司が2020年に乗り込んで以来、ノアの世代闘争は激化の一途。レジェンドと30代、40代の現世代、25歳の清宮海斗ら若き世代の3世代が激しくぶつかり合い、勢力図はしばしば書き換えられている。
その結果、ファイトスタイルも多様性に富み、さまざまな世代のファンが楽しめているのも事実。1・8横浜決戦の新日本との全面対抗戦でも「ノアの力」を発揮した。ノアが勢いに乗っていることは誰にも否定できないはず。
現時点では藤田と船木がベルトを手にしているが、他のレジェンドたちはもちろん、現世代、若い世代のノア戦士がただ手をこまねいているはずもない。とっくに反撃ののろしはあがっている。
藤田の初防衛戦は3・21福岡国際センター大会で田中将斗(48歳)と決まった。昨年暮れの一騎打ちは30分時間切れ引き分けだった。さまざまなリングで多彩なバトルを繰り広げてきたベテラン同士のGHC戦には期待が高まるばかり。
新たな王者像を目指す藤田和之がけん引するノアマットは、やけどしそうなほど熱い。(文中敬称略)