音楽と女優の二刀流 「ファイトソング」で話題の藤原さくら「表現は共感能力」

演技での経験が音楽にも生かされているという【写真:舛元清香】
演技での経験が音楽にも生かされているという【写真:舛元清香】

演技での経験が音楽にフィードバック「自分が成長し、歌詞に生かされていく」

 演技をすることは、歌うことに似ていると感じている。「カバー曲を歌うことに近いですね。『ムジカ・ピッコリーノ』や、自分のレギュラーラジオでもカバーの曲を歌ったりするんですけど、その時に、他人の人生に歌を通して触れられる気がします。私にもわかるという時もありますし、こういう捉え方もあるなって思ったり。表現は共感能力だと思うんです。映画を観て、主人公の気持ちになって、泣くとか。最近だと、アニメの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観て号泣しちゃいましたね」。

 一方、大きく違うことも。「ドラマだと、自分が演じるシーンを撮り終わったらその日に戻ることができない。舞台公演でも例えば悔しいことがあっても、『もう終わったことだから、仕方ない』と思うんですが、音楽制作は、逆にやり直せてしまうところがあって。『ブルーピリオド』(高校生が美大を目指す青春ストーリー)の中で、『作品は諦めたらそこで完成だよ』ってセリフがあるんです。それって、監督さんのお仕事とも似ているかもしれないですよね。完成を決めるのは自分。だから、締め切りが大事。締め切りがないと多分、リリースできないです(笑)」。

 演技での経験が音楽にフィードバックされることもある。「『ラヴソング』の後にアルバム『PLAY』(17年)を出しましたが、そこには、当時演じた役のことを考えて作った曲もあります。でも、多くは自然と作品の中に組み込まれていくかな。いろんな人との出会いの中で感じたことが投影され、自分が成長し、歌詞に生かされていく感じです」。

 劇中では、スランプに陥ったミュージシャンの芦田が、花枝との恋の取り組みをすることで、新たな曲作りにチャレンジしようとする。ここも共感ポイントの一つだ。

「自分が納得のいく良い曲で、みんなに聞いてもらえる曲を作るのはすごく難しい。芦田さんのあの状況はとてもつらいと思います。新曲のコンペが目前、それで事務所を辞めさせられるかもしれない。きつーい! でも、正直、音楽はどこででもできると思います」

 藤原流スランプの脱出方法は? 「一旦寝かせますね。歌詞を書くときとかは外に出て散歩とか。電車移動中に突然、書けたりすることもありますし、ちょっと遠回りしてみたり、景色を変えてみるという感じです。自転車に乗っている時に思いつくことも多いので、そんな時はケータイのボイスメモで録る。でも、雑音がすごすぎて、ちゃんと聴こえないということも(笑)。そういう時は、思い出せないなら大したことないのかも、と見切りをつけます」。

 今後も、音楽と女優の二刀流で活動していく。「すごく望んでもらえる役があって自分も、自分にしかできない役があれば、挑戦してみたいです。ただ、私『ヒロインしかやりたくねぇんだ』みたいな気持ちはないです」と笑い。最後は凛ちゃんぽい口調で、語ってくれた。

□藤原さくら(ふじわら・さくら)1995年12月30日、福岡出身。2015年3月、ミニアルバム「a la carte」でメジャーデビュー。16年4月、フジテレビ系月9ドラマ「ラヴソング」にヒロイン役として出演。19年から20年にかけて、劇団☆新感線39サンキュー興行・春公演いのうえ歌舞伎「偽義経冥界歌」で舞台初出演。最新デジタルシングル「mother」配信中。

スタイリスト:伊藤信子

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