「投げ銭は正当な対価」 コロナ禍で急拡大のライブ配信、トップライバー社長が説く心得
コロナ禍の影響で急拡大しているライブ配信業界。「17LIVE(イチナナ)」や「Pococha(ポコチャ)」、「BIGO LIVE(ビゴライブ)」などのプラットフォームに加え、2020年7月には若者に人気のモバイル端末向けショートビデオプラットフォーム「TikTok(ティックトック)」もライブ配信機能を搭載、ある調査では20代~60代の約半数がライブ配信を視聴したことがあると回答するなど、大きな注目を集めている。
配信者は視聴者からの「投げ銭」で収益が得られる一方、トラブルも
コロナ禍の影響で急拡大しているライブ配信業界。「17LIVE(イチナナ)」や「Pococha(ポコチャ)」、「BIGO LIVE(ビゴライブ)」などのプラットフォームに加え、2020年7月には若者に人気のモバイル端末向けショートビデオプラットフォーム「TikTok(ティックトック)」もライブ配信機能を搭載、ある調査では20代~60代の約半数がライブ配信を視聴したことがあると回答するなど、大きな注目を集めている。
「ライバー」と呼ばれる配信者は視聴者から「投げ銭」や「ギフト」と呼ばれるチップを受け取ることで収益が得られる一方、今年1月には埼玉県越谷市のアパートで配信者の女性が配信を通じて知り合った男性に殺害されるなど、トラブルの要因となることも。ライブ配信とはどういった世界なのか。2018年に「17LIVE」で日本人最速となるフォロワー27万人超えを記録、現在はライバー事務所「Grand New Day ,Inc.(グランニューデイ)」の社長も務めるトップライバーの林村ゆかりさんに、ライブ配信業界の現状を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
「ライブ配信の特徴は、スマホ1台で誰でも気軽に始められるということ。撮影や編集の技術も必要なく、ある程度のルックスとコミュニケーション能力があればファンがつき収益が得られる。トップ層となると話は変わってきますが、リアルタイムであること、配信のハードルが低いことがYouTuberとの一番の違いです」
現在、国内では大小10以上の配信プラットフォームがあり、オンライン飲みのようなまったりした雰囲気が主流のものや、配信者側の接客色が強いもの、海外の配信者や視聴者が多いものなど、それぞれ特色があるという。投げ銭などの収益はプラットフォームごとに還元率に差があり、時給制のものや、事務所に所属して初めて収益が得られるものなどさまざまだ。視聴者からの「投げ銭」が原資だが、これといった見返りがないにもかかわらず投げ銭が成立するのはなぜなのか。
「芸能人でされている方もいますし、トップ層だと大勢の人が視聴していますが、基本的にはリアルタイムでそこに集まった人だけのクローズドな空間。中規模だと地下アイドルのライブ、小規模だとライバーを中心としたサークルのようなイメージというと分かりやすいでしょうか。視聴者の数はそこまで関係なく、極端な話、太いファン一人で成り立っている配信もある。YouTubeと違ってリアルタイムで双方向のコミュニケーションなので、話し相手や癒やしを求めて配信に来て、そのお礼として投げ銭をされる視聴者の方は多いです。収益はお小遣い稼ぎ程度の人から副業クラス、週に数百万円も稼ぐ人などさまざまです」
一方で、金銭の授受が絡む以上、トラブルに発展するケースも。「Grand New Day ,Inc.」のようなライバーマネジメント事務所は多数あり、育成指導だけでなく会計士による所得税申告や顧問弁護士による相談、誹謗(ひぼう)中傷に対するSNSサポートなども行う。トップライバーに登りつめた林村さんでさえ「一人でやるには限界があった。困ったときに相談できたり、同じ目的を持った仲間が集まる場所を作りたかった」との思いから会社設立に至ったという。
「私も最初はそうでしたが、リスナーさんから投げ銭をもらうことに罪悪感を感じてしまう人もいる。昔は投げ銭に対して、たかりと言われることもありましたが、今やライブ配信の文化として根付いているもの。客商売と同じように、自分自身が商品で、投げ銭はコンテンツを提供している正当な対価なんだという自覚を持つことが大事です。ライバーをやっている人にしか話せない悩みもたくさんあって、そういう相談に乗ってライバーを応援するのがマネジメント会社の役割だと思ってます。一握りのトップライバーになるには、ルックスや会話のテクニック、特技、忍耐力など多くのものが必要とされますが、副業レベルの収益化なら性別・年齢を問わず誰でもできてしまうのがライブ配信の魅力。誰にでもできるからこそ、きちんとしたマネジメントの必要性も感じます」
コロナ禍の巣ごもり需要の追い風に加え、今後は企業案件のライブコマースなどさらなる成長が見込まれるライブ配信業界。個人で行うにはリスクもあり、企業によるマネジメントも急速に拡大している。