那須川天心は「友達がいなかった」 才能見出したRISE代表が明かす劇画のような物語

メイウェザー戦で得たものは「自信」、学んだものは「勝ちに徹する方法」

 この話をしていた時の伊藤代表の目が輝きを増していたように見えた。

「もちろん天心戦のメイウェザーは不明確な体重だったけど、それでもメイウェザーを本気にさせる。メイウェザーって当たらないじゃないですか、パンチは。だったら当ててやろうって。結果、天心は3発当てたんですよ。そしたら本気で倒しに来たんですよ。そこで天心もダウンしましたけど、メイウェザーを本気にさせたっていう部分では、やってよかったと思いますし、自信を持ったと思います」

 そしてこの後、伊藤代表は「あれを経験したら、あれ以上に怖いことはない」と口にした。実はこの言葉は、アントニオ猪木が時のプロボクシング世界王者だったモハメド・アリとの「格闘技世界一決定戦」(1976年6月26日、日本武道館)を終えてからかなり時間がたったころ、試合を振り返って口にした言葉でもあった。

 さらに伊藤代表は天心VSメイウェザーを振り返り、興味深い言葉を発した。

「こんな言い方、天心はうれしいかどうか分からないけど、今負けてないじゃないですか。唯一のKO負けがメイウェザーですよ。まあ、アメリカからしたらねえ、カラテキッドがチャレンジャーみたいな感じだし、メイウェザー的にはビジネスだと思ったんだろうけど、ある意味ではメイウェザー陣営の勝ちに徹するやり方、そういうことを我々も勉強できたし、だからこそ、この人たちは輝いていけるんだなっていうのを我々も見ながら学べたし、そこは勉強になりましたね」

 天心はメイウェザーと諸々の常識を乗り越えてリング上で相対した。その頃からだろうか、天心がボクシングに転向する、という話が聞こえ始めたのは。これに関して伊藤代表は、天心に対して「格闘技=那須川天心になれ」の次の言葉をこう告げたという。

「ボクシングに行くなら、世界を必ず取れ」

 もちろん、天心にはその前に格闘技界で残された使命がまだ、いくつか残っている。要は、我々は今少しだけ、天心の格闘技界での勇姿を見続けていられる時間がある。もちろん、その傍らには那須川会長をはじめとするTEAM TEPPENの面々にくわえ、伊藤代表を含めたRISE関係者の姿を確認することができるに違いない。

次のページへ (6/6) 【動画】伊藤代表が天心のRISEラストマッチについて語る実際の動画
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