那須川天心は「友達がいなかった」 才能見出したRISE代表が明かす劇画のような物語
伊藤代表が明かした天心の強さの秘密 「刷り込まれていますよね」
振り返ると、伊藤代表は中学生時代から今までずっと天心と接してきた。最初に才能を見出したのはいつだったのか。
「(14年7月にあった)デビュー戦もランカーが相手でしたけど、例えば5戦目には村越優汰とのタイトルマッチですね。その当時は僕がウチのジムで教えていたので。まだTEPPEN GYMがちゃんとしたジムを持っていない時だったんですね。その頃、天心はまだ若手で無名で、みんなに『早いよ』って言われていて。たぶん、天心本人と僕と那須川さんだけ、絶対にいけると思っていたんですよ」
なぜ伊藤代表と天心親子だけがそう思えたのか。
「動きというか、動体視力・反射神経。天心は距離感のつかみ方がうまいんです。だから打ち合っているように見えるけど、打ち合っていないんですよ」
打ち合っているように見えて、実は打ち合っていないとは、いったいどういう意味なのか。
「小さい頃から、大きい相手と闘ってきているから、そこではぶつかったら負けるんです。そこで勝つためには、出入りを速くする。当てて逃げて、来たらスッと離れる。その距離の取り方が抜群なんです。あれは天性というか、幼少の頃から父親と二人三脚でやってきて、刷り込まれていますよね。武道でいうところの間合いの取り方が抜群です」
伊藤代表によって、くしくも天心の強さの秘密が明かされたが、振り返るとデビューからここまで何度も天心は「前代未聞」を実現してきた。なかでも18年大みそか、さいたまスーパーアリーナでの「RIZIM.14」でプロボクシング世界4階級王者のフロイド・メイウェザーと拳を交えたのは屈指の経験だろう。公式記録には残らないエキシビションマッチではあるものの、メイウェザーと拳を交えた唯一の日本人が天心なのだ。
メイウェザーに関しては、かつてキックボクシングの元世界王者でもあった伊藤代表に聞いてみたいことがあった。それは、もし伊藤代表が対戦オファーをされたらどうするか、である。
すると伊藤代表は「やりますよ」と即答し、こう続けた。
「(メイウェザーは)世界の長者番付No.1じゃないですか。俺だって、今やれって言われてもやりますよ。勝てるとか負けるとかじゃないんですよ。どんな拳をしてるんだろうって、普通思いません? 俺は天心はやると思っていましたし、ファイターならやるでしょう。メイウェザーじゃなかったらダメですよ。世界でNo.1、それだけ注目される。どれだけ強いんだよって」