那須川天心は「友達がいなかった」 才能見出したRISE代表が明かす劇画のような物語
遊ぶ間もなかった天心の少年時代 父は「巨人の星」星一徹の親父
「(トーナメントには)国内のそうそうたるメンバーが出て、最高峰のトーナメントだったじゃないですか。ましてや天心とも闘っている志朗に勝って風音は優勝した。これは実績的には申し分ない。彼が切り開いた道ですよね。ただ、僕も風音が『天心とやりたい』って言うと思わなかったので、ホントにビックリしちゃって。こいつ、ホントにハングリーだなと。成り上がりって言葉が本当に合っているなと思ったんですよ」
それでも、その段階での伊藤代表は、天心の相手に風音はあり得ないと思ったという。
「でもその後、指導している那須川さんの気持ちも動かされたんでしょうね」
いつのまにか風音の思いの強さに那須川会長の心は動かされ、天心と相対する覚悟を決めるが、その流れの中で伊藤代表が天心のRISEラストマッチを、この“公開親子ゲンカ”で行こうと決めたのはいつなのだろうか。
「年末くらいに天心と話したんですよ。そしたら『父親も言っているんですよね。風音も言っているんですよね。僕、思い知らせます』って。結構、軽かったんですよ」
裏を返せば、軽く感じたからこそ、その裏には秘めたものがあったとも考えられる。
「万が一、父親が風音のセコンドに付いたらどう思うんだ?って聞いたら、『全然関係ないです。それも含めてやっつけます』って。こいつ、本当のファイターだなって思いましたよ」
ところが、今度はバトンを渡された伊藤代表に迷いが生じた。
「僕はその瞬間から悩んだんですよ。これを決めていいものか。でもね、那須川さんと天心は似ているんです。同じような性格じゃないですかね。だから正々堂々っていうかサッパリしているし、隠しごともないような感じなので、逆に、この2人ならできるんじゃないかって」
いわば人気漫画「刃牙」の世界か、令和版「巨人の星」か。いずれにせよ梶原一騎的世界観が天心VS風音戦でよみがえることになった。
「まさに『巨人の星』に出てくる星一徹の親父ですよ、那須川さんは。絵に描いたような。まさしくあの通り。天心は遊ぶ時間もなく、毎日、学校から帰ったら練習・練習・練習。ちっちゃい頃の天心は友達がいなかったっていうんですよ。遊びに行ってもいいよって言っても、『ホントにいいの?』って。でも普段、友達と遊んでないから、遊ぶ友達がいなかったって。天心ももちろんすごいけど、それを毎日やる那須川さんもすごいですよ」