ジャンプ混合団体のスーツ失格騒動、柔道界から学べる前例「排除するためのルールじゃない」

柔道着の袖や襟にロウや整髪剤、続いたイタチごっこ

 柔道着に現在の基準が採用されたのは1989年で、袖口は腕から5センチから10センチに変更された。それまでは、袖を極端に短くしたり、細くしたり、ひじの部分にぶ厚いサポーターを入れてつかみづらくするなど、悪質な柔道着を着用する選手が横行。より組みやすくするための、日本からの提案だった。

 それでも違反者は後を絶たなかった。試合になると、確認したものとは別の柔道着を着ている選手がいたり、袖や襟にロウや整髪剤を塗って滑りやすくする選手も現れた。そのたびにルールは厳格になった。

 東京五輪の前にも、グランドスラムやグランプリといった国際大会では違反者が続出した。名前の入っていない予備柔道着を着て闘う選手がニュースになった。IJFが東京五輪に向けて取り締まりを強化した結果だった。予備柔道着は東京五輪でも60着が用意されていた。

 柔道着のリザーブはジャンプにはない救済措置だ。前出関係者は、「ずっと言えることは、違反のために失格にすることはなかった。排除するためのルールじゃないですから。競技させるため。認めて、許して、受け入れる。それが“柔だ”という思いがあります」と訴える。

 柔道もジャンプも、勝利のためには用具においても規定ぎりぎりのラインを目指すという側面がある。ともに会場にはメーカーがミシンや裁縫道具を持ち込み、細部の調整に備えている。違いがあるとすれば、柔道に比べ、女子ジャンプは北京が3大会目という歴史の浅さか。4年に1回の五輪という大舞台でそれまで積んだ選手の努力を水の泡にしないためにも、公平なルールの整備が改めて問われる。

次のページへ (3/3) 【動画】器具を使用し公平にチェック…柔道着を測定する実際の映像
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