ジャンプ混合団体のスーツ失格騒動、柔道界から学べる前例「排除するためのルールじゃない」
北京五輪ノルディックスキー・ジャンプ混合団体で、高梨沙羅(25=クラレ)がスーツの規定違反により失格になったことが大きな波紋を広げた。高梨を含む5人の女子選手が相次いで失格となった裏には、検査方法の変更や厳格化があったと報道されており、国際大会でのルールの在り方がクローズアップされている。日本チームは国際スキー連盟(FIS)に意見書を提出する方針を示すなど、今後の検査制度に一石を投じる事態となっている。一方、スーツなどのウエアの違反を巡っては、柔道界も苦慮した歴史がある。柔道着の違反はどのようにコントロールされてきたのか、その取り組みを追った。
羽賀龍之介や中村美里がツイート「やるせない」
北京五輪ノルディックスキー・ジャンプ混合団体で、高梨沙羅(25=クラレ)がスーツの規定違反により失格になったことが大きな波紋を広げた。高梨を含む5人の女子選手が相次いで失格となった裏には、検査方法の変更や厳格化があったと報道されており、国際大会でのルールの在り方がクローズアップされている。日本チームは国際スキー連盟(FIS)に意見書を提出する方針を示すなど、今後の検査制度に一石を投じる事態となっている。一方、スーツなどのウエアの違反を巡っては、柔道界も苦慮した歴史がある。柔道着の違反はどのようにコントロールされてきたのか、その取り組みを追った。(取材・文=水沼一夫)
高梨らのスーツの違反を巡っては、当日の検査方法がこれまでのワールドカップ(W杯)などの国際大会と異なっていた可能性が指摘されている。通常は腕を体から30センチほど離して検査を受けるが、万歳をさせられたり、通常は着衣したままのスパッツも脱がされて測定されたという。高梨は太もも回りが約2センチ大きかったとして、違反を宣告された。
1本目のジャンプ後にスーツ検査が抜き打ちで行われたことは公平性を欠くと批判された。一方で、W杯での計測方法がずさんだったとの指摘もある。
騒動が波紋を広げる中、SNS上で注目を集めたのが柔道家たちの発言だった。
2016年リオデジャネイロ五輪男子100キロ級銅メダリストの羽賀龍之介は、自身のツイッターで、「柔道の場合、試合直前の柔道着検査をクリア出来なければ大会側が用意した柔道着を着用します。その際はメーカーもサイズ感も選べないしペナルティーとしてコーチボックスへの帯同も認められません」と説明。その上で、「試合の後に道着が小さかったから失格です。だったらやるせないですよね」と、ジャンプのスーツ検査に疑問を呈した。
また、リオ五輪女子52キロ級銅メダルの中村美里は、「スーツを事前チェックしない理由とかあるのかな?」とつぶやき、「#スキージャンプ」とハッシュタグをつけた。いずれも、柔道(道着)と比較し、ジャンプ(スーツ)の検査の違いに率直な感想を示したものだ。
柔道着には明確な規定があり、国際柔道連盟(IJF)によって大きさから生地、折り目の数まで決められている。国際大会では、IJFの役員がチェックを担当。試合前に規定の柔道着を着用しているかどうかを1人ずつ、ランダムではなく、全選手を確認する。
チェックの仕方も、統一されている。選手は両腕を水平に90度、肩の高さに上げ、両手の人差し指と親指を合わせて三角形を作る。袖口の大きさは専用の測定器を使って正確に計測する。仮に違反した場合は、各大会の主管が用意した予備柔道着に着替えて、試合は出場できるが、コーチはコーチボックスに入れない。
このような厳しいルールになったのは、柔道着違反の対応に苦慮してきた歴史があるからだ。多くの国際大会の運営に関わってきた柔道関係者は「1990年代から柔道着チェックが厳しくなった。柔道着コントロールという特別な時間を設けたり、合格しなかったらゼッケンを縫わなかったり、試行錯誤の繰り返しでした」と話す。