「宇宙戦艦ヤマト」小野大輔が振り返る10年の旅路「古代進の立ち位置は僕と同じ」
ヤマトでは悲しい別れも「自分はバトンを渡されて、次の世代に渡していく場所に」
古代は「2199」では戦術長として登場し、沖田十三艦長亡き後、艦長代理となり、最新作では、艦長に就任した。「古代の立ち位置は僕と同じような感じなんです。後輩からの突き上げがあって、地球には、お偉いさんたちがいて、その考え方が違ったりします。声優の世界も、上は層が厚く、後輩には背中を見せなきゃいけないですから。ヤマトに触れるまでは、自分だけしか見えていなかったかもしれない」。
ヤマトでは悲しい別れもあった。2018年に土方竜役の石塚運昇さん、20年には榎本勇役の藤原啓治さんが亡くなった。「忘れられない先輩ですね。僕が好きな先輩たちはみんな無言実行で素晴らしいお芝居を届けてくれました。掛け合うと何段も上に引き上げてもらえたんです。古代の『たとえ一瞬で最後に愛する人に会えて、それだけで人は救われるんだ』という台詞で、お二人のことを思い出しました」
2人の先輩からは託されたという思いがある。「ヤマトは次の世代に託していくお話なんですよね。今、自分はバトンを渡されて、次の世代に渡していく場所にいるんだと思うと、ジーンときてしまい、そのことを、シリーズ構成の福井晴敏さんや、監督の安田賢司さんにもお伝えしました」。
「2205」では、新たに乗船する土門竜介という若者も登場。かつての古代進をほうふつさせる情熱的なキャラクターで、後輩・畠中祐が演じている。「後輩は基本的に褒めますね。祐には、『お前、役のまんまだな』って言いました。土門は、がむしゃらでそんなに器用じゃないんですけど、1本筋が通っていて、真っ直ぐ。そんなところが重なるんです。それって自分が古代進と一緒だなと思ったのと同じだなと思ったんですね」。
アフレコはコロナ感染症対策のため1人ずつ収録していった。「掛け合いたいとは思いましたが、いい部分もありました。スタッフさんたちと、密に打ち合わせができて、1人で掘り下げる時間も長く取れました。一人一人の収録でしたけど、迷いなくできました。覚悟が決まったんでしょう。出来上がりは思った通り、思った以上だったと思います」。
シリーズ最新作「ヤマトよ永遠(とわ)に REBEL(レベル)3199」の制作も発表された。「どんな話になるんでしょうね。僕ら声優は最後に知るんです。福井さんには、毎回、『なぜ、つらい旅に出るんですか』と聞いていますが、『また大変な目に合いますよ』ってうれしそうに答えてくれました。そんなワクワクした笑顔を見て、楽しみにしています」。
世代を越えて、50年近く愛される「宇宙戦艦ヤマト」シリーズ。「原作を愛してくれた皆さんにはぜひこの新しい世代のヤマトも見ていただきたい。原作にあったダイナミズム、ストーリーの魅力はそのままに、あのとき分からなかったこと、もっともっと知りたかったこと、あのとき好きだと思ったあのシーンも、今の技術で、今の熱量で描ききっています。絶対にヤマトはヤマトを裏切らない。初めてヤマトに触れる世代に向けては、『これが日本のアニメです』と言いたい。たぶん100年後もずっと語り継がれていく作品です。ヤマトを見ると、おじさんたちとも話せますし、盛り上がります」とアピール。小野大輔=古代進の旅はまだまだ終わらない。
□小野大輔(おの・だいすけ)1978年5月4日、高知県出身。主な作品は「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ(空条承太郎)、「黒執事」シリーズ(セバスチャン・ミカエリス)、「おそ松さん」(松野十四松)、「銀河英雄伝説 Die Neue These」(ウォルフガング・ミッターマイヤー)、「進撃の巨人」(エルヴィン・スミス)、「吸血鬼すぐ死ぬ」(ヒヨシ)、「斉木楠雄のΨ難」(燃堂力)。特技:土佐弁。